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「チンクエチェント」なのにフィアットじゃない!? 独自エンジン搭載のシュタイア・プフ「500D」が約260万円で落札…出品者はガッカリ…!?

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Bonhams

ちょっと自信過剰だった……? と思わせるエスティメート

このほどボナムズ「LES GRANDES MARQUES DU MONDE À PARIS 2025」オークションに出品されたシュタイア・プフ500Dは、1960年に生産された個体。シャシーナンバーは「5120243」とのことである。

じつをいうと、ボナムズ社のオークション公式カタログにはこの500Dの個体情報が一切記されておらず、新車としてデリバリーされた時代から現在に至るまで、いかなるヒストリーを辿ってきたかは不明である。

また、個体情報が記されていないということは、当然ながらレストアの内容や時期についても不明ながら、カタログ写真を見る限りでは、トロっとした色調のソリッドグリーンにペイントされたボディや、2トーンのインテリア、あるいはフラットツインエンジンを収めたエンジンコンパートメントに至るまで、非常に現代的なレストアセンス、そして、いわゆる「ミント」か「それ以上」のコンディションを有しているようだ。

この素晴らしいコンディションに自信を得たのか、出品者である現オーナーはボナムズ社の営業担当者と相談のうえ、3万ユーロ〜5万ユーロ(邦貨換算約480万円〜800万円)という、おどろくほどに強気のエスティメート(推定落札価格)を設定。さらにこの出品については、比較的安価なクルマ、あるいは相場価格の確定していないクルマでは定石となる「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」で行うことを決定した。

国際市場に出回る機会はめったにないシュタイア・プフ 500Dの結果は?

この「リザーヴなし」という出品スタイルは、金額の多寡を問わず確実に落札されることから競売会場の雰囲気と購買意欲が盛り上がり、ビッド(入札)が進むこともあるのがメリット。しかしそのいっぽうで、たとえビッドが出品者の希望に達するまで伸びなくても、落札されてしまうリスクも不可避的についてくる。

そして迎えた2025年2月6日、1900年のパリ万博会場である「ヒストリーク・ドゥ・グランパレ」にて行われた競売では、リスクに挑んだことが裏目に出て、終わってみればエスティメート下限の半額にも近い1万6100ユーロ。現在のレートで日本円に換算すれば、約260万円で競売人のハンマーが鳴らされるという、出品者側にとってはガッカリな結果となったのだ。

とはいえ、この落札価格はシュタイア・プフ 500Dの相場(国際市場に出回る機会はめったにないが……)から見ると、至極順当なものともいえる。フィアット・アバルト 595/695にも相当する650TR系ならまだしも、スタンダードの500Dで今回ほどのエスティメートを希望するというのは、いくらなんでも楽観的過ぎると思われたのである。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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