30分の急速充電時間は長い!
レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之氏が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「急速充電器」です。EVシフトしなくてはいけないはずですが、まだまだ問題点が多いのが現状です。
綿密な行動計画が大事
このところ、EV需要に陰りが見えていますね。世界的なEV施策が鈍化しているようで、かつてのような飛ぶ鳥を落とすような勢いがないようです。そう、EVの普及を鈍化させている理由のひとつに「急速充電の速度」が壁となって立ちはだかっているようです。
搭載するバッテリーを大容量にすれば後続可能距離を伸ばすことは可能ですが、充電に要する時間的なロスはなかなか消えません。およそ3分の給油で400km以上の航続が可能なガソリン車に慣れたユーザーにとっては、30分の急速充電時間は長く感じるようです。
「そんなに待たされるのは厳しい」
特にせっかちな国民は、EVには抵抗があります。実際に僕も、EVで長距離移動するには、綿密な行動計画を練るようにしています。
○キロ走ったらバッテリー残量は○○%だから、高速道路の△△で給電しよう。その時間を利用してランチにして……などと計画するわけです。具体的に紙に残すわけではありませんが、頭の中でシミュレーションするユーザーも少なくないはずです。
「EVで旅するには、計画自体を楽しめる人でなければならない」
EV生活を過ごす僕の友人はこう語ります。なるほど、納得しますね。
200Wの普通充電器こそ、普及させるべき
幸いにも、急速充電ステーションも増えていますし、そもそも急速充電の出力が日増しに進化しています。当初は25kW程度の非力なタイプでしたが、50kWも増えていますし、90kWの充電器も少なくありません。頻繁に活用する定宿に、これまで1基しか急速充電器がなかったのですが、最近になって3基に増やされていました。多少は便利になったのです。
先日のこと、中国のBYDが「3分の充電で400km走行可能」の超高出力の急速充電器を発表しました。EVの充電はオスとメスの性能がバランスされていることが条件です。急速充電器側が高出力で押し込もうとしても、受け手の性能が低いと期待通りに電力を注ぐことができません。ですから急速充電器の性能だけを上げるのではなく、クルマ側の性能も引き上げる必要があるのですが、ともあれ、給電時間短縮にとっては光明かもしれませんね。
ただし、急速充電器の性能や数ばかりに目が移りがちですが、個人的には200Wの普通充電器こそ、普及させるべきだと思っています。EVで旅に出て、ホテルに宿泊することが多いのですが、急速充電器がかえって不便に感じることがあります。急速充電器では30分しかチャージできません。ですがそもそも宿泊ですから、部屋でのんびり旅をしたい。ですが、30分後にのこのこと急速充電器に歩み寄り、充電器を人に譲らなければならないのです。
だったら充電速度は遅くてもいいから、つまり、一晩かかってもいいから、200Wの普通充電の方が便利なのです。200Wでしたら設置コストもリーズナブルですから、たくさん設置することができますよね。宿泊前提のホテルでしたら普通充電が理想のように感じるのです。いかがでしょう?






































