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視覚障がい者でも箱根のワインディングを走りたい!「パラモトライダー体験走行会」でプロジェクト始動?

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TEXT: 青山義明(AOYAMA Yoshiaki)  PHOTO: 青山義明(AOYAMA Yoshiaki)

  • 参加者からの聞き取りも行って有意義な一日となったとも
  • 静岡大学木谷研究室のメンバーがボランティアスタッフとして今回の「パラモトライダー体験走行会」に参加
  • 今回は4名が「パラモトライダー体験走行会」に参加。3名の練習会参加者を合わせ50名強のスタッフが集結し、このイベントを支えた
  • 次回のパラモトライダー体験走行会は、2025年5月18日(日)に群馬県にある群馬自動車教習所で「パラモトライダー体験走行会」を開催予定。さらに5月31日(土)~6月1日(日)の2日間、名古屋市榮にある久屋大通公園内で行われる「手羽先サミット2025」にも参加予定
  • 走行を終えヘルメットを脱いだ時に垣間見られる笑顔。そして周囲のボランティアスタッフの温かい拍手とハイタッチ。この場にいることの歓びである
  • 脊髄損傷の方の中には体幹の弱い方もいる。いかに車両をまっすぐに走らせられるか、そのコツを伝えながら、実走行に反映させていく
  • バイクは各参加者に合わせて仕様変更する。またSSPでは接地する角度に違いを設けたアウトリガーを複数用意しており、バイクの操作のレベルに応じてこれを付け替えながら走行を重ねていく
  • この自動補助輪装着車両の増車で、箱根ターンパイクでのツーリングもサポートするボランティアスタッフもパラモトライダーと一緒にツーリングができるようになるかも!
  • 自動補助輪は格納式で、手元に用意されたスイッチでその上げ下げを行う。低速走行で補助輪を下げそのまま停止が可能。発進も同様で、平坦な路面で低速での走行で問題がないことを確認した
  • スタッフがインカムを通してライダーに指示を出すことで視覚障がいを持つパラモトライダーでも走行が可能。2021年9月には千葉県にある袖ヶ浦フォレストレースウェイを1周したことも
  • 意外かもしれないが、以前バイクに乗っていたという病気による失明の元ライダーだけでなく、「バイクに乗ってみたい」と思う先天性の視覚障がい者も多い。SSPのイベントにも多くの視覚障がいの方がやってきている
  • 何かあった際にすぐに支えることができるよう、ボランティアスタッフは常に走行する車両と一緒に走り緊急時に備えている
  • バイクのカスタムを行っているTRIJYA(トライジャ)のサポートで自動・電動補助輪装着車。走行中はしっかり格納されるのでバンク角の妨げもなさそう

個人の障がいに合わせてプログラムを組んで展開

障がいを持った人でもバイクに乗る機会を設けようと、公益社団法人SSP(サイドスタンドプロジェクト)は「パラモトライダー体験走行会」を定期的に開催しています。SSPは2025年4月1日(火)に、一般社団法人から公益社団法人へと法人格の変更。公益社団法人として最初の「パラモトライダー体験走行会」が2025年4月21日(月)、神奈川県川崎市の向ヶ丘自動車学校にて開催されました。

2つのプログラムを同時に開催

「パラモトライダー体験走行会」は、事故や病気といった後天性の機能障がいや先天性の障がいの方がで、バイクに乗りたいという想いを実現する体験イベントだ。バイクに乗る楽しさを体感してもらい、障がいがあっても諦めない心を育むことを目的として開催している。

SSPは、参加者に合わせて独自に改造したバイクを用意。安全のための装備のほかに、走行する場所を提供する形で開催している「パラモトライダー体験走行会」は2020年にスタートし、2025年で6年目。下肢に障がいがある方には、手元でシフト操作が行えるハンドシフトユニットや転倒防止のためのアウトリガーを装備した車両を使用。また、ヘルメットにはインカムを装着し、スタッフとのコミュニケーションが可能な状態にしている。

車両への乗降については、ボランティアスタッフがサポート。また走行時にもボランティアスタッフが一緒に走って、万が一の際には即座にサポートできるよう体制を整えている。さらに理学療法士も参加し、各参加者の体調や状態に応じたサポートを行っている。

参加者は交通事故などによる脊髄損傷や大腿切断をはじめ、視覚障がいなどさまざまな機能障がいを負っている。SSPでは、各参加者に寄り添って、毎回バイクの改造をはじめとした各個人の障がいに合わせてプログラムを組んで展開している。

走行場所はサーキットや駐車場、休校日の自動車教習所などを使用し、完全にクローズドな状態で安全に配慮して開催をしてきている。

今回は脊髄損傷の4名が参加。無事に事故なく各参加者が予定の走行練習を行うことができた。また新たに大型バイクの練習会を開催。SSPでは「パラモトライダー体験走行会」以外にも神奈川県にある箱根ターンパイクを占有した公道でのバイクツーリングの機会も設けていた。しかし参加するライダーから、年に1回の箱根ツーリングだけでは不安がある……もっと走行の練習をする機会がほしい、という要望に今回応えたわけだ。

大型バイクを走らせるには、スタッフも走行場所も必要となる。開催場所となった向ヶ丘自動車学校のコースでは区分けをして行われた。体験走行会はインフィールド側を大型バイクについては外周路を使用することでその課題をクリア。さらにバイクには自動補助輪を装着し、走り出しや停止の際のボランティアスタッフの作業をなくすことができるようになった。

盲目でも箱根を走りたい

すべての人にバイクに乗る楽しみを、というコンセプトでこのイベントを行っているSSPでは、多くの方のバイクに乗りたい夢を実現してきた。しかし視覚障がいの方々の「箱根を一緒に走りたい」という夢は実現できていない。

今回の向ヶ丘自動車学校における「パラモトライダー体験走行会」にボランティアで参加していたのが静岡大学の木谷友哉教授をはじめとする木谷研究室の皆さん。木谷教授の「二輪車情報学研究室」は、自動二輪車を対象に車体や周辺環境をセンシングする研究開発を行っている。2輪に特化した高度交通システム(ITS)の研究を行っている研究室は非常に少ないが、この2輪のセンシング技術を用いてみると、視覚障がいを負っていても箱根のルートを実際に走行できるのではないか? 今回実地の見学も含め研究室のメンバーでやってきた。

実際の走行までにどんなハードルがあるかも含め、すぐに実現できることではない。しかし、この研究開発が進めば、SSPの現場で2輪車の進化が見られるかもしれない。

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  • 青山義明(AOYAMA Yoshiaki)
  • 青山義明(AOYAMA Yoshiaki)
  • 1969年生まれ。美術大学で日本画を学んだ後に、編集プロダクション数社を経てフリーランスライター&フォトグラファーに。編集者時代にかかわってきたモータースポーツ取材を続け、現在も2輪4輪問わず国内外のサーキットやラリーシーンを取材している。日本モータースポーツ記者会会員。
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