自ら手でメンテナンスをするオーナーのもと、20年以上も大切にされている個体
フィアット・アバルト1000ベルリーナ・コルサ・ラディアーレは、辛口の多いアバルト製レーシングベルリーナのなかでも火を吐くように激辛ながら、日本のアバルト系イベントでは、常に「クラブ・アバルト」重鎮たちによって3~4台が揃うのが当たり前になっている。元ワークスカーや名門サテライトチームカーなど、いずれも素晴らしい経歴の3台が揃うのは、本当は驚くべきことなのだ。
今回、富士スピードウェイ・ショートサーキットの「Gran Premio Scorpionissama(グランプレミオ・スコルピオニッシマ)」に、長年のオーナー、小笹博大さんとともに現れた1000ベルリーナ コルサ ラディアーレもまた、現役時代には有力チームのもとでレースに活躍した1台。しかも、「ラディアーレ」エンジンが完成された直後の1967年から、グループ5(特殊ツーリングカー)仕様で製作されたごく少数の内の1台とされる。
製作直後にデンマークのディーラーに引き渡されたこのクルマは、オーナーであるレーシングドライバー、ソン・ボルク・クリステンセンのドライブで、デンマーク国内選手権グループ5/1000cc以下クラスのレースで、見事にデビューウィンを飾った。
その後はデンマークや北欧のレースで1980年代まで活躍したのち、今世紀初頭にはクラシックカーレースにも姿を現し、元F1パイロットのヤン・マグヌッセンがドライブしたこともあったそうだ。2002年に当時のオーナーと直接交渉することに成功した小笹さんは、ついにこの小さな怪物を入手。5人目のオーナーとなった。
本職ではお堅い職業に就いているという小笹さんは、じつに23年もの長きにわたり自らメンテナンスしつつ、サーキットイベントやツーリングなどでも愛用。はた目には、この「イル・モストロ(怪物)」については酸いも甘いもすべて知り尽くしたようにも映るが、乗るたびに、あるいは触るたびにその奥の深さを思い知らされる。
それでも
「もう20年以上も乗り続けているんだから、あとは一生モノとして現状維持していきたいですね」
と答えてくれたのである。






















































