高出力化の一途を辿る船外機を多搭載が主流に
興味深いのは、自動車メーカー同士が「海の上」でもライバルとして火花を散らしている点です。
陸上では二輪車、軽自動車からスポーツカーまでしのぎを削るホンダ、ヤマハ発動機、スズキが海でもほぼ同じ顔ぶれで戦っています。ホンダの静粛でクリーンな4スト船外機、ヤマハの高出力・高耐久モデル、スズキの高効率な先進技術搭載モデルです。まるでマリーナがもうひとつのモーターショー会場のようです。
さらに欧米では、トヨタもマリン事業を展開しています。自社ブランドの高級ボートを開発し、マリンレジャーの世界に本格参入しました。自動車メーカー同士の競争は、もはや道路にとどまらず、海上へと広がっているのです。
そもそも、近年は船外機そのものが急速に主流化しています。かつてはインボード(船内機)やインボード/アウトドライブが定番だった30フィート級の船も、今では300psから400psクラスの船外機を2基、3基並べれば十分な性能が得られる時代です。
とくに急がず浜から近いエリアで釣りを楽しむのならば、ローパワーで低価格の船外機を積めば事足ります。ボートに速さを求めるのならば、高出力の船外機を搭載し、それを3基でも4基でも増やせます。なかには5基を並列に搭載する武闘派もいます。船内機ではそう簡単にはいかないからです。こうした理由から船外機が人気なのです。
メンテナンスが容易でコストも低く、キャビンやデッキの空間も広く使える。そんな合理的な理由から、プレジャーボート市場の主役は船外機へとシフトしました。欧米の大型センターコンソール艇ブームも追い風です。
「白物家電」から「デザイン要素」への変遷
こうして船外機の存在感が増すなかで、デザインも大きく変わりました。
ホンダは漆黒のカウルで精悍さを強調しています。ヤマハは艶やかなメタリック塗装とシャープな造形で欧州艇との調和を演出しています。スズキは深みのあるブラックやパールカラーを展開し、エンブレムも高級感を増しています。
もはや船外機は裏方ではなく、見せるデザイン要素です。空力・冷却効率を踏まえた造形が性能にも寄与し、スタイルと機能が一体化しています。性能・デザイン・ブランド戦略。そのすべてが波間でぶつかり合っています。
道路だけでは満足できない彼らの戦いは、海へと舞台を移し、船尾から新しい物語を描き始めています。






































