私財を投じて作られた自動車文化の拠点
モータージャーナリストの中村孝仁氏の経験談を今に伝える連載。今回は、ロサンゼルスのダウンタウンに建つピーターセン・オートモーティブ・ミュージアムを紹介します。創設者の思いが詰まったこの博物館には、名車だけでなく、映画やアニメに登場した意外なクルマまでが収蔵されていることで有名です。実際に足を踏み入れると、展示車両の背景や成り立ちが見えてきて、単なる博物館とは少し違う印象を受けました。
6代目マスタングの記念式典で展示された珍しい歴代モデル
ロサンゼルスのダウンタウンに位置するピーターセンミュージアム。ここは有名な博物館なので、この記事を読んでいる人のなかには行ったことがある人もいるかもしれない。
ここを創設したのは、ロバート・ピーターセン。すでに2007年に他界しているが、彼は戦後、映画会社として有名なMGMに就職した。しかし、人員削減の憂き目にあって解雇される。彼はここからでホットロッドマガジンを立ち上げ大成功を収め、自動車関係を中心とした出版社を築き上げる。彼が出版した自動車雑誌のなかには、あのモータートレンドも含まれている。
そんなピーターセンが、私財を投げうって創設したのがピーターセンミュージアムで、設立は1994年のことだった。
ここは2度訪れた。最初がいつだったかは記憶にないが、2度目は6代目のフォード「マスタング」が誕生した2014年である。発表は2013年のことで、2014年に試乗会が行われた。その時、フォードはピーターセンミュージアムに歴代のマスタングを並べて、アメリカにおける発表会を催したのだ。常設の展示とは別に、おびただしい数のマスタングが並べられ、なかには見たことがなかったモデルも並べられていた。
その1台は、マスタング誕生45周年を記念して、その生みの親であるリー・アイアコッカにちなんだ「アイアコッカ・エディション」である。フロントノーズに彼の名が刻まれたエンブレムを装備したこのクルマは、手作りで45台が製作されたそうで、そのうちの1台が、6代目の発表の場に置かれていた。
2014年に訪れたときは、設立された当初のビルと同じだったが、じつはこの直後に建物自体が作り直されて、現在は実に奇抜な姿のビルに変容している。この博物館は基本的にアメリカ、それも西海岸の自動車文化を中心とした展示が多く、MGMをクビになったとはいえ、一時は映画界に身を置いていたピーターセンらしく、映画やテレビショーに登場したクルマの展示も数多い。
映画やアニメから飛び出した実車たちを展示
そんなモデルのいくつかを紹介すると、マスタング繋がりで常設展示されているのが、原題「Gone in 60 seconds」に登場した「エレノア」の愛称を持つ1971年式のマスタングである。ボコボコになった痛々しい姿は眼をそむけたくなるが、これは撮影に使用されたクルマそのもので、ボディパネルの内側には、ナスカーマシンよろしくロールケージが張り巡らされ、トランスミッションのマウントもスペシャルだという。まあ、個人的には主演もオリジナルと同じニコラス・ケイジが出演したリメイク版「60セカンズ」に登場する1967年式のGT500の方が好みだが。
もう1台ユニークなモデルが展示されている。それは日本のアニメ「マッハGoGoGo」に登場したマッハ号だ。単なるモックアップではなく、シボレー「コルベットC4」をベースに作られた実動車である。コルベット用の5.7L V8エンジンはドライバー背後に搭載されているそうで、ミッドシップに改造されているから、シャシーの方も大改造、もしくは特別に作られたものだろう。もちろんワンオフのクルマだ。
























































