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EVの時代でもオイルは必要!? 出光が進める植物由来の高性能オイルなどの開発現場を取材

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TEXT: 吉田由美(YOSHIDA Yumi)  PHOTO: 吉田由美(YOSHIDA Yumi)

植物由来成分80%の世界初レーシングオイル

そして、この取材には続きがあります。幸運にも後日、その研究所を見せていただくことが叶いました。

そこは千葉県市原市にある「出光興産 営業研究所」です。道を挟んだ向かい側には、横に8km、縦に4kmに広がる出光の製油所や関連施設があります。研究所内は機密保持のため、撮影できる場所が限られていました。

まずは、出光が開発している次世代のレーシングエンジンオイル「IDEMITSU IFG Plantech Racing(イデミツ・アイエフジー・プランテック・レーシング)」についてのプレゼンテーションです。ちなみに「IFG」とは、「Idemitsu Four-wheelers’ Gasoline engine oil」を意味します。このオイルは現在、日本国内では一般販売されていませんが、世界で初めてAPI SP承認取得を受けた植物由来80%でレーシング性能を実現した世界初の次世代エンジンオイルです。110年以上の歴史を誇る出光興産が、その知見のすべてを注ぎ込んでいます。

サステナブルと高性能は両立できるのか

出光の強みは、創業当時から培ってきた潤滑油のノウハウにあります。国内主要メーカーと長年歩みをともにし、各社で異なるエンジンのコンセプトやパーツの要望に対し、ナノレベルでコンマ単位の配合調整を行う「ナノスケールの技術」と、顧客ごとの最適解を導き出す「テーラーメイドの思想」を磨き上げてきました。そのエッセンスは、全国の出光のガソリンスタンド「apollostation(アポロステーション)」で販売されているオイルにも脈々と受け継がれています。

「サステナブル」と「高性能」という組み合わせは、相反するものに感じますが、開発のきっかけは、現代のドライバーが抱く「環境への配慮」と「走りの楽しさ」を両立したいというニーズから生まれたとのこと。

「石油ではなく植物から。それでも性能には一切妥協しない」という高いハードルを超え、誕生したのが「IFG プランテックレーシング」です。出光のフラッグシップシリーズである「IFG7」のDNAを受け継ぎつつ、さらに進化させたもので、2024年9月からマツダのスーパー耐久参戦車両に実戦投入されています。

「IFG プランテックレーシング」には7つのメリットがあります。「オイルの蒸発抑制」「保護性能」「ピストンの清浄性」「ストップ&ゴー時の保護」「低オイル消費」「優れた燃費」「パワーの最適化」。

とくに気になった3点。まずは「圧倒的な低蒸発性」。一般的なオイルに比べ、蒸発量を約50%抑制しています。オイルの減少を防ぎ、長時間ベストなコンディションを維持します。ふたつ目は「摩擦ロス50%カット」。独自の配合技術により、エンジン内部のフリクション(摩擦抵抗)を極限まで低減し、エネルギー効率を最大化します。そして「こだわりの添加剤」。燃費向上に効果的な「モリブデン」や、金属表面を保護する「エステル」を、長年の経験に基づき最適に配合しているとのことです。

研究所では、このオイルに使用されている材料などを見せていただきました。中身については門外不出の機密情報が含まれるため、写真掲載はNGでした。ただ、材料の研究者に女性が多いのが驚きでした。

実際にこのオイルを、マツダのスーパー耐久開発車両(ST-Qクラス 12号車)に使用する「MAZDA SPIRIT RACING」の前田育男代表に感想を伺うと、次のように語ってくださいました。

「非常に精製精度が高く、24時間レースを走り切っても、同等のベンチテストを行なっても性能の劣化はほとんどなく、バイオ由来のネガティブな部分は感じられませんでした。市販化に向けては、生産量と価格が課題でしょうか」 過酷な状況下での耐久性と保護性能は、プロの現場でも証明されています。

クルマを愛する人にとって、エンジンは心臓であり、オイルはその生命を維持する血液です。

「世界初の植物由来レーシングオイル」は、単なる環境性能だけにとどまらず、愛車のポテンシャルを最大限に引き出しながら美しい環境を守るという、令和のドライバーにふさわしい「新しいスタンダード」への招待状なのかもしれません。

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