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「天然ゴム」こそタイヤの命! クルマの体温計「天然ゴム相場」が示す世界経済の未来!?【Key’s note】

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TEXT: 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)  PHOTO: 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)  FACT CHECK: 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)

  • 過酷なレース環境に耐え抜くための、グリップ力に優れた専用コンパウンド
  • 過酷なレース環境に耐え抜くための、グリップ力に優れた専用コンパウンド
  • SUV等で見られる背面タイヤ。タイヤの需要は自動車産業と密接に連動する
  • 四輪だけでなく、バイクの足元を支えるブロックタイヤにも天然ゴムは不可欠だ
  • 路面と接するトレッド面。黒くて丸い工業製品だが天然の成分が主体である
  • ウォーマーで適切に温められ、コースインの瞬間を待つ競技用のスリックタイヤ
  • 燃費性能や静粛性など、用途に合わせて最適なゴムのブレンドが存在している
  • エコからスポーツまで、乗用車用タイヤには天然と合成のブレンドが不可欠だ

中東情勢の緊迫化で原油高でも「天然ゴム」の上値は重い!? 天然ゴム相場動向に隠された世界経済の未来予測

レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之氏が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語ってくれるのが「Key’s note」です。今回のお題は「天然ゴム」となります。私たちの生活に欠かせない自動車のタイヤですが、じつはその主成分が天然ゴムであることをご存知でしょうか。今回はタイヤと天然ゴムの密接な関係を紐解きながら、ゴムの価格相場から見えてくる「世界経済の未来」について、鋭い視点で考察します。

タイヤの主成分は天然ゴム。過酷な環境に耐える必須の素材

タイヤに配合されている天然ゴムの上値が重い(値は上に行きたがっているけれど何かに抑えられていて進みが悪い、の意)そうです。

天然ゴムの国際指標のひとつである大阪取引所の先物価格も、中東情勢の緊迫化を受けた直後は1kgあたり385円まで高騰したものの、そのあとは365円前後で安定しているといいます。急騰はひとまず抑えられているようです。

天然ゴムは生活のさまざまな場面で使われていますが、その用途の中心にあるのが自動車用タイヤです。世界全体で見れば、天然ゴムの消費量のうちおよそ65〜75%がタイヤ向けに使われています。じつはトラックやバスなど重荷重による発熱を抑え、引き裂き強度を確保するためには天然ゴムを70〜80%使用し、乗用車用では耐摩耗性や濡れた路面でのグリップ力を重視するため天然成分は40%ほどと用途によって天然が主体か合成が主体かに分かれるらしいのです。

天然ゴムの産地はタイやインドネシア、あるいはベトナムやマレーシアなどの温暖多湿な国です。パラゴムノキという植物から樹液を取り出し、それが天然ゴムになります。いかにも環境に良さそうな天然ゴムと、工業製品であるタイヤのイメージの隔たりが興味深いですが、確かにタイヤには天然ゴムが欠かせないのです。

天然ゴムは引っ張りや摩耗に強く、繰り返しの変形にも耐える特性を持つとされています。そのため、過酷な使用環境にさらされるタイヤにとって欠かせない存在となっています。

とくにトラックやバスといった大型車両のタイヤでは、前述したようにこの特性が重視されます。長距離を走り、大きな荷重を支える必要があるため、天然ゴムの配合比率は乗用車用タイヤよりも高くなる傾向にあります。

いっぽう、乗用車用タイヤでは、天然ゴムと合成ゴムをバランスよく組み合わせることで、燃費性能やグリップ力、静粛性といった多様な性能を両立させています。つまり、用途ごとに最適な「ブレンド」が存在し、そのなかで天然ゴムは重要な役割を担い続けているのです。

「クルマの体温計」と呼ばれる天然ゴムだが、これからは「世界経済の体温計」となり相場で未来が見える!?

こうした構造から、天然ゴムの需給や価格動向は自動車産業の動きと密接に連動します。自動車生産が増えればタイヤ需要が高まり、天然ゴムの消費も伸びます。逆に景気が減速すれば需要は鈍化し、価格にも影響が及ぶのです。

ところが、現在の天然ゴム相場の上値は重いといいます。軍事衝突によるホルムズ海峡の余波で原油価格が上昇しており、当然、製造段階でオイルが不可欠な合成ゴムは価格が急騰します。ならば代替となる天然ゴムの価格も上がるはずなのですが、反応は鈍いのです。

その理由は、今後の世界経済がシュリンク(縮小)すると市場が予測しているからです。原油高がインフレを招けば消費行動は萎縮し、自動車の生産が減り、結果として天然ゴムが求められなくなります。天然ゴムの上値が重いのは、安定供給されているからではなく、その先の世界経済を映し出しているからなのです。

昔から天然ゴムは「クルマの体温計」とも言われています。しかし今の相場動向を見ると、もはや「世界経済の体温計」なのかもしれません。

黒くて丸いタイヤの奥には、東南アジアの豊かな自然と、複雑に絡み合う国際情勢、そして未来の経済動向が隠されています。次に愛車のタイヤを交換するときは、そんなスケールの大きな物語に少しだけ思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

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  • 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
  • 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
  • 1960年5月5日生まれ。明治学院大学経済学部卒業。体育会自動車部主将。日本学生チャンピオン。出版社編集部勤務後にレーシングドライバー、シャーナリストに転身。日産、トヨタ、三菱のメーカー契約。全日本、欧州のレースでシリーズチャンピオンを獲得。スーパー耐久史上最多勝利数記録を更新中。伝統的なニュルブルクリンク24時間レースには日本人最多出場、最速タイム、最高位を保持。2018年はブランパンGTアジアシリーズに参戦。シリーズチャンピオン獲得。レクサスブランドアドバイザー。現在はトーヨータイヤのアンバサダーに就任。レース活動と並行して、積極的にマスコミへの出演、執筆活動をこなす。テレビ出演の他、自動車雑誌および一般男性誌に多数執筆。数誌に連載レギュラーページを持つ。日本カーオブザイヤー選考委員。日本モータージャーナリスト協会所属。日本ボートオブザイヤー選考委員。
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  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 1960 年生まれ 大学卒業後ベストカーガイド編集部勤務。1990年オートスポーツ誌に転職、1992年F1速報誌(アズエフ)編集長。1995年月刊ビデオマガジン編集部に転職、1996年ベストモータリング編集長(のち局長兼務)。2005年ネコパブリッシング・イベント本部長/4輪編集局長兼務。2015年交通タイムス社に転籍、2020年より現職(総編集局長)自動車の分野に問わずオールマイティだが、特に旧いモータースポーツとクラシックカーに造詣が深い。愛車は1969年DATSUN Fairlady SRL311/YAMAHA RD250ほか

 

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