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ホンダやトヨタが挑む! ラグビー最上級リーグの知られざる熱狂と折れない骨格【Key’s note】

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TEXT: 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)  PHOTO: HONDA  FACT CHECK: 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)

  • 三重ホンダヒート:秩父宮ラグビー場の芝に立ち、静かな熱を孕みながら闘いの時を待つ
  • 三重ホンダヒート:企業スポーツという見えない骨格を背負い、最上位リーグで躍動する
  • 三重ホンダヒート:結果がすべてではない。圧倒的な劣勢のなかでも決して諦めず前に進む
  • 三重ホンダヒート:ぶつかり、倒れ、また立ち上がる。その単調で詩的な反復が魅了する
  • 三重ホンダヒート:リーグワンが掲げる理念。企業カラーと地域文化が混ざり合う空間だ
  • 三重ホンダヒート:神宮の大歓声とは対照的な静寂のなか、身体の軌跡を芝へと刻み込む
  • 三重ホンダヒート:炎の演出に照らされる選手たち。敗戦の過程にこそ次の可能性が宿る
  • 三重ホンダヒート:企業に属しつつも、試合中はどこにも属さない純粋な闘士として輝く
  • 三重ホンダヒート:華やかではないが決して折れない骨。それこそが企業チームの矜持だ
  • 三重ホンダヒート:喝采の大きさではなく続くこと。持続を支える見えない骨格こそ彼ら
  • 三重ホンダヒート:風に消される足跡。しかしピッチには彼らが生きた確かな瞬間がある
  • 木下隆之:スタンドから試合を見つめる筆者。敗戦の悔しさのなかに清々しい余韻を感じ取る
  • 三重ホンダヒート:楕円球を追う姿。企業スポーツの誇りをピッチ上で静かに体現している
  • 三重ホンダヒート:痛みを媒介にした叙情詩のような競技。その過酷な舞台で円陣を組む
  • 三重ホンダヒート:勝敗を超越した姿勢に魅力が宿る。ノーサイド直前での執念のトライ

勝敗を超えた先にある叙情詩! 自動車メーカーが支える企業チームの矜持

レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之氏が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語ってくれるのが「Key’s note」です。今回のお題は、企業スポーツとプロスポーツの狭間で揺れるラグビーのトップリーグ「リーグワン」における、三重ホンダヒートの戦いについてです。秩父宮ラグビー場での熱戦と、隣り合う神宮球場との対比から見えてきた、競技の真髄と企業チームが果たす役割について独自の視点で綴ります。

敗戦の底に見た執念のトライ。リーグワン観戦で気づいた、スコアを超え人々の心を揺さぶるラグビー競技の「戦う姿勢」

先日のこと、ラグビーのトップカテゴリーであるリーグワンの「三重ホンダヒート対ブラックラムズ東京戦」を観戦しました。

秩父宮ラグビー場の芝は、どこか静かな熱を孕んでいました。満員というわけではありません。しかし、観客の視線は濃く、ひとつひとつのプレーに宿る意志を確かめるようにピッチへ注がれていました。

私はホンダヒートの応援席で観戦したこともあり、気持ちはホンダヒートにありました。試合は惨敗でした。あと一歩、いや結構な大差で敗れたのですが、スコアボードの数字よりも鮮明に記憶に残るのは、彼らの身体の軌跡でした。

ぶつかり、倒れ、立ち上がり、また走る。その反復は単調に見えて、じつは極めて詩的です。ラグビーという競技は、痛みを媒介にした叙情詩のようなものだと、ふとそんなことを思いました。

ゲームは圧倒的劣勢で、ノーサイド直前まで得点0に封じ込められてはいたものの、最後の最後で執念のトライを決めました。スタンドは、まるで勝利したかのような盛り上がりを見せたのです。つまり、ラグビーは勝ち負けではなく、戦う姿勢に魅力が凝縮されているように感じました。

日本におけるラグビー人気は、しばしば「代表戦頼み」と言われます。ラグビー日本代表が世界の舞台で躍動するとき、街はにわかに色づき、普段は楕円球に縁のない人々までが歓声を上げます。しかし、その熱は長くは続きません。まるで打ち上げ花火のように、鮮やかであるほど、消えたあとの夜空の静けさが際立つのです。

個人的には古くからラグビーを観戦し続けてきていたため、そんな風潮にいささかの寂しさを感じるものの、それでもこうして東京のど真ん中で観戦できることを嬉しく思います。

企業カラーと地域愛が交錯するリーグワンの熱源。プロと社員選手が混ざり、独自進化を遂げるラグビー界の「企業スポーツ」現在地!?

ところで、その静けさのなかでプレーする者たちは何者なのでしょうか。企業チームという呼び名はどこか無機質で、スポーツの純粋性と距離を置いているようにも聞こえます。

本田技研工業を母体とする三重ホンダヒートのメンバーもまた、企業スポーツ選手です。昼間はホンダ社内で仕事をして、午後に練習に参加する者もいます。彼らはホンダからの給与が生活の糧であるため、プロスポーツ選手とは呼べないかもしれません。一方で、ラグビーだけで収入を得ているプレーヤーはプロです。その中間のプレーヤーも存在します。企業スポーツがセミプロと呼ばれる所以はそこにあります。

リーグワンは、ラグビーのトップリーグのことです。3部制のピラミッド型であり、三重ホンダヒートはそのなかの最上級、ディビジョン1に属しています。

リーグワンの理念は、日本ラグビーのプロ化と高度化にあります。そのために、地域密着を目指してホームタウン化を進めているのです。チーム名に地域名が加わるのはそのためです。

注目すべきは、世界トップクラスの選手がプレーするものの、企業スポーツらしく企業カラーと地域文化が混ざり合う、独特の空気を持っている点です。

ちなみに、リーグワンにチームを持つ自動車メーカーは少なくありません。ホンダは三重ホンダヒート、トヨタはトヨタヴェルブリッツ、日野は日野レッドドルフィンズとして挑んでいます。

サッカーもかつては企業スポーツでしたが、Jリーグが成功したことから、現在はほぼプロチームとして展開しています。名古屋グランパスはトヨタ、横浜F マリノスは日産、浦和レッズは三菱を母体としており、企業チームがプロ化した好例です。いっぽうで、ホンダFCのように現在もあえてプロ化せず、アマチュア最高峰の企業チームとして独自の存在感を放つ例もあります。

プロ野球の喧騒背に、聖地・秩父宮で触れたラグビーの本質。企業スポーツという「折れない骨格」が紡ぐ、執念と持続の叙情詩

この日はラグビーの聖地である秩父宮ラグビー場での観戦でしたが、その隣の神宮球場ではヤクルトスワローズ対読売ジャイアンツの試合が行われていました。

秩父宮の観客席からは、神宮球場の電光掲示板が見えます。さすがにプロ野球人気は凄まじく、大歓声がこちらまで届いてきました。その対比が、プロスポーツとセミプロスポーツの違いを如実に伝えていたように思います。スタンドで観ていると、不思議な感覚にとらわれます。選手たちは企業に属しながらも、同時にどこにも属していないように見えるのです。

あの日の敗戦は、確かに悔しさを残しました。しかし同時に、どこか清々しさもありました。結果がすべてではない、と言うのは簡単ですが、結果に届かなかった過程にこそ次の可能性が宿るという感覚は、スタンドにいた誰もが共有していたのではないでしょうか。

ラグビー人気は、これからも波のように寄せては引くのでしょう。大きな大会のたびに盛り上がり、そのあとに静けさが戻る。その繰り返しのなかで、企業チームは変わらずピッチに立ち続けます。

芝の上には、今日もまた無数の足跡が刻まれていきます。やがてそれは風に消され、次の試合には何も残りません。しかし確かに、その瞬間は存在しました。三重ホンダヒートのプレーは、その「消えていくものの確かさ」を、静かに教えてくれます。

そして気づくのです。ラグビーという競技の本当の魅力は、喝采の大きさではなく、続いていくことそのものにあるのだと。企業スポーツとは、その持続を支えるための、いわば見えない骨格です。華やかではありませんが、決して折れることのない骨。そこにこそ、この競技の未来が宿っています。

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  • 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
  • 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
  • 1960年5月5日生まれ。明治学院大学経済学部卒業。体育会自動車部主将。日本学生チャンピオン。出版社編集部勤務後にレーシングドライバー、シャーナリストに転身。日産、トヨタ、三菱のメーカー契約。全日本、欧州のレースでシリーズチャンピオンを獲得。スーパー耐久史上最多勝利数記録を更新中。伝統的なニュルブルクリンク24時間レースには日本人最多出場、最速タイム、最高位を保持。2018年はブランパンGTアジアシリーズに参戦。シリーズチャンピオン獲得。レクサスブランドアドバイザー。現在はトーヨータイヤのアンバサダーに就任。レース活動と並行して、積極的にマスコミへの出演、執筆活動をこなす。テレビ出演の他、自動車雑誌および一般男性誌に多数執筆。数誌に連載レギュラーページを持つ。日本カーオブザイヤー選考委員。日本モータージャーナリスト協会所属。日本ボートオブザイヤー選考委員。
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  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 1960 年生まれ 大学卒業後ベストカーガイド編集部勤務。1990年オートスポーツ誌に転職、1992年F1速報誌(アズエフ)編集長。1995年月刊ビデオマガジン編集部に転職、1996年ベストモータリング編集長(のち局長兼務)。2005年ネコパブリッシング・イベント本部長/4輪編集局長兼務。2015年交通タイムス社に転籍、2020年より現職(総編集局長)自動車の分野に問わずオールマイティだが、特に旧いモータースポーツとクラシックカーに造詣が深い。愛車は1969年DATSUN Fairlady SRL311/YAMAHA RD250ほか

 

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