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F1やSUPER GTのレーシングマシンで使用するガソリンやオイルは市販車用とちがう?

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: Auto Messe Web編集部

かつてはあった特殊ガソリンの時代

 高度にチューニングされたレーシングカーは、特殊なガソリンを使っているのではないか? そんな疑問を問いかけられることがあります。実際かつてのF1GPでは、秘密の添加剤を配合した特殊なガソリンを使用していることがありましたが、各チームに暗黙の了解があったのは事実。某チームのピットに行くと目が痛くなる、などの声も良く聞かれました。また遥か昔、国内モータースポーツの黎明期にはアブガス(Ave-Gas=Aviation Gasolin)と呼ばれる航空機燃料を使用していた、とも伝えられています。

 しかし、近年では規制が強化。各チームで勝手にガソリンをチューニングすることは出来なくなっています。ただしF1GPでは、チーム毎にテクニカルスポンサーのガソリンメーカーと共同で開発することは認められていますが、市販のガソリン、つまりガソリンスタンドで販売されているガソリンに含まれている成分のみを使用して、その組成比を変更することのみ許されているだけです。

 またシリーズ第2戦が10月に富士スピードウェイで行なわれ、2020年6月のル・マン24時間を最終戦としているWEC(世界耐久選手権)では、全参加車が、昨年からテクニカルスポンサーを担当しているTOTALから供給される燃料を使用することになっているなど、使用燃料を統一するレースも存在します。

 

国内レースではハイオクガソリンを使用

 国内レースに目を向けると、規制はさらに強化されており、スーパーGTやスーパーフォーミュラなどの国内最高カテゴリーから、ローカルサーキットで開催されているフレッシュマンレースなどのグラスルーツなレースにおいても、市販ガソリンを使用。ここでの市販とは、レギュレーションブックで、”当該サーキット内で販売されているガソリンを使用すること”、と定められている市販ガソリンを指すが、各サーキットではレースの際に、ガソリンの成分表を特別競技規則で発表している。

 また、国内のレースならば街中のスタンドで買ってくればその成分は一目瞭然ですが、海外のサーキットとなると話が違ってきます。チューニングされたエンジンは非常にナーバスな一面を持っているので、エンジンチューナーやメーカーのエンジン担当技術者などは、現地のサーキットに出かけてまで、サンプルとなるガソリンを手に入れている、そんなエピソードを聞いたこともありました。

 サーキット内のガソリンスタンドで販売されているのは、街中のスタンドで販売されているのと同じ。すなわち、レギュラーガソリンよりもオクタン価を上げた“ハイオク”ガソリンであり、鈴鹿サーキットならばシェル石油のV-Powerと呼ばれるハイオクを使用しています。

 サーキット内という特殊な環境下であり、例えば高速道路のサービスエリアと同様に、街中のガソリンスタンドで購入するよりは価格が高く設定されていて、例えば鈴鹿サーキット内のスタンドでのハイオクはリッター200円。街中の市販ガソリンの価格が上下するように、サーキット内のスタンドでも上下するようですが、9月上旬の段階ではこの価格でした。

 なお、SUPER GTでは「No.12 カルソニック IMPUL GT-R」、スーパーフォーミュラでは「ITOCHU ENEX TEAM IMPUL」として2台体制で参戦するINPULの高橋紳一朗工場長にお聞きしたところ「レース前にはタイヤ関連に使用する窒素ボンベの発注とともにガソリンも購入しています。SUPER GTですと(通常の300kmレースなら)600リッターほど、2台体制のスーパーフォミュラでは約800リッターを事前に購入しておき、足りなくなりそうな場合には追加で購入します。搬入日には窒素のボンベがピットに届けられますが、ガソリンについてもスタンドのスタッフさんがピットまで届けてくれるんです」とのこと。

 実際、レースウィークが始まる頃には、サーキット場内にあるガソリンスタンドのスタッフが、ドラム缶に詰めたガソリンをピットまで届けに来ているシーンを見かけるし、レースが終了し、ピットを撤収したチームスタッフが、自分たちの移動に使うチームカーに、余ったガソリンを給油しているのも見慣れた光景です。

 

市場に結びつくレース使用のオイルブランド

 一方、オイルに関しても市販品を使用するケースが大半。SUPER GTのGT500クラスで、第5戦のタイ・ラウンドに続き、第6戦の富士500マイルでも連勝を飾ったNo.6 WAKO’S 4CR LC500(LEXUS TEAM LEMANS WAKO’S)のタイトルスポンサーを務める和光ケミカルでは、”4CR SR”という商品を6号車で使用するだけでなく、No.38 ZENT CERUMO LC500にも供給しています。

 プロジェクトリーダーの小野瀬義幸さんにお聞きしたところ「市販品を使うというか、SUPER GTのLC500用に開発したオイルを市販している、といった方が正確ですね」とのこと。

 そして「LC500にベストなものを、と開発した4CR SRは、街乗り用で使用しても何ら問題はありません。レース用のオイルと言うと、ライフっが短くて300kmしか持たないのではないか、と思う人がいらっしゃるかもしれませんが、そうじゃないんです。ライフも含めて充分な性能を持たせています」と語ってくれた。

 ただし「街乗り用に対してベストかというとそうじゃない部分があるのも事実。同レースでもカテゴリーが違えば要求性能も変わってきます。ひと口にレース用と言っても色々ですが、前述のように4CR SRはSUPER GTのLC500にベストなオイル、ということです」と話してくれました。

 レースで培われた最先端技術がそこここにフォードバックされているブランドは、使用するクルマの要求に合わせていろいろ市販品が選べる、ということになってもいるのです。

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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