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全日本ラリーでは「無冠の帝王」だった? 超人気車「AE86」が現役時代勝てなかった理由とは

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TEXT: 酒呑童子  PHOTO: 酒呑童子/TRD/日産自動車/齋藤 優

1.6L NAと3Lターボが同じクラスに!?

 翌1985年、全日本ラリーにNISMOがZ31型フェアレディZ300ZXを投入。当初、狭い国内ラリーのコースには大柄なZは不向きと見られていたが、意外にも高い操縦性と圧倒的なパワーを活かして、やすやすとチャンピオンを奪取してしまった。そもそも、3.0Lターボ車と1.6L NA車が同じクラスで戦うことに違和感を覚えるが、当時のレギュレーションでは同じクラスだったのだ。

AE86が全日本ラリーで王者になれなかった理由

 そして1986年。この年再び日本のラリー界に激震が走った。エンジンはノーマルだったが、実はシャーシの改造範囲が広いままだったのだ。サスペンションにしても3リンクリジッドを5リンクリジッドに改造したり、AE86でもリヤサスペンションを等長リンクに改造することもできた。もちろん、クロスミッションも搭載可能だった。実態としてはりっぱな違法改造。これが再び問題になったのである。そこで1986年シーズンから、シャーシ面の改造も大幅に規制されたのだ。ロールバーや4点式フルハーネスも禁止(フルハーネスはSSの入り口で装着は可能だった)。バケットシートとステアリング交換も禁止され、純正もしくはオプションまでとされた。サスペンションはスプリングの交換や車高調も禁止。純正スプリングに純正形状のダンパーのみ交換が許された。またホイールも純正もしくはオプションまでとされ、一時的ではあったもののラリータイヤの装着も禁止されたのだ。そして速さに直結するクロスミッションも当然のごとく禁止となった。

 このレギュレーションの改定により、危険なクルマでラリーはしたくないと、有力チームが全日本ラリーからの撤退を表明するなど最悪のシーズンとなった。一方、1985年10月にはマツダからファミリア4WDターボ(1.6L)が登場した。 

 1986年の全日本ラリーでは多くのAE86ドライバーもファミリア4WDターボにスイッチ。いよいよ国内ラリーシーンも4WDターボの時代が幕を開けた。ちなみにこの年のチャンピオンカーは、やはりフルタイム4WDのスバル・レオーネ・クーペRX-Ⅱ(1.8Lターボ)だった。少数派のクルマがタイトルを獲得することになった。

 そして、この年を境に圧倒的台数を誇ったAE86は先代のTE71同様に一度もタイトルを獲得することなく全日本ラリーから姿を消していったのである。

クロスミッション禁止が大きな痛手に

 ちなみに筆者は、AE86がデビューした頃にディーラーへ試乗しに行った経験がある。その時の印象は「意外と線の細いエンジンだな」というものだった。高回転までモーターのようにストレスなく吹き上がるのだが、中低速のトルクが細く感じたのだ。その点では前世代の2T-GEUのほうが骨太でパンチがあるように思った。ちなみに当時はジェミニZZ-Rに乗っていたから、余計にか細く感じられたのではないか。

AE86が全日本ラリーで王者になれなかった理由

 後に、中古のフルラリー仕様のAE86に乗り換えたが、そのクルマには3速クロス+スーパーシフトというフルクロスミッションが搭載されていた。このため、以前の試乗で感じたものとは異なり、峠道でも常にパワーバンドをキープできるのでかなり速いという印象だった。しかし、前記のように1986年の車両規定の改定でクロスミッションからノーマルミッションに戻したところ、驚くほど遅いクルマになってしまった。こうしたことからも、クロスミッションが使えなくなり戦闘力が大幅に低下したことも、AE86が国内ラリーから姿を消した理由のひとつではないだろうか。

AE86が全日本ラリーで王者になれなかった理由

 最後にAE86を擁護するとすれば、ラリー会場で多数派を占めていたことも無冠の理由のひとつではないだろうか。つまり、レギュレーション違反の領域までインチキ改造をすれば、同じAE86ユーザーから「あのクルマはおかしい。ハチロクがあんなに速いはずがない」と指をさされることは間違いない。しかし少数派で、しかも同一チームからのエントリーであれば、比較のしようがないためレギュレーション違反の改造をしても発覚しにくい利点がある。多数派が勝ちにくいジンクスは、後のファミリア4WDターボやギャランVR-4にも言えることだろう。

AE86が全日本ラリーで王者になれなかった理由

 全日本クラスではタイトルを奪取できなかったAE86だが、その下の地方選や県シリーズなどアマチュアの参加するラリーでは勝てるクルマとして高い人気を誇っていた。パーツも豊富でコストパフォーマンスも高く、乗りやすい。4WDターボ時代が到来するまでは、圧倒的なシェアを誇ったラリーカーだった。

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