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子どもたちに自動車を学んでもらうために誕生! 初代Zのデザイナーが手掛けたと言われる ダットサン・ベビイとは

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田 了/日産/Auto Messe Web編集部

遊戯用カートと思いきや、高度なメカニズムを満載

 横浜に誕生したこどもの国は「次世代を担うこどもの健全育成のため児童福祉法に基づく児童厚生施設」がコンセプトです。児童福祉と情操教育を目的とする施設として、自然のなかでの冒険や動物との触れ合い、物を作る体験など、素朴な遊び体験を重視。園内にはほかの遊園地のような、観覧車やジェットコースターといった大型の電動遊具はありませんでした。

 ですが、日産が同園の設立意義と社会的使命に強く共感、「子どもたちに自動車の正しい知識を持ってもらい、交通安全に寄与するために本物の自動車交通教育を提供しよう」との想いから開発したのがダットサン・ベビイなのです。

 日産は100台のダットサン・ベビイを寄贈するだけでなく、専用走行コースの監修や交通教育の教材提供も実施しています。子どもたちは、運転免許を持つ大人の運転で乗車するほか、小学5年生から中学3年生までの制限がありました。

 併設の交通訓練センターで、交通法規やクルマの構造を学び、指導員の同乗で実際にS字などのコースなどを走ったあと、専用コースを1周する実技試験を受け、園内で有効な“免許証”を取得すればひとりで運転することもできました。1973年にアトラクションが終了するまでに約4万5000人が免許を取得、大いに人気を呼んでいたことでしょう。ということでいよいよダットサン・ベビイです。

 小柄なコニー・グッピーをベースにしているだけに、ダットサン・ベビイも随分小柄。サイズ的には全長×全幅×全高は2960mm×1420mm×1245mmですが、全長と全幅にはバンパーガードが含まれているので、事実上は同寸と考えてよいでしょう。

 ホイールベースも1670mmで共通しています。しかしフェアレディZのデザイナーとして知られる松尾良彦さんがデザインしたと言われるだけあって、45mmだけ全高を低くした2ドアクーペは、スマートななかにも愛らしさの感じられるデザインとなっています。

 エンジンは2サイクルの強制空冷単気筒で、排気量は199ccとコニー・グッピーと同様。ですが、園内で子供がひとりで運転することを考慮したのか最高出力はコニー・グッピーの11ps/6000rpmから7.5ps/5000rpmにチューンし直されていました。

 ちなみに20km/hを超えるとホーンが鳴りっぱなしになり、30km/hを超えるとリミッターが効く安全設計となっていました。シャシーもコニー・グッピーと同様で、サスペンションはフロントがコイルで吊ったダブルウィッシュボーン、リヤがゴムばねで吊ったトレーリングアームの4輪独立懸架でした。

 リヤのゴムばねにはナイトハルト式のゴムばねを使用するなど、独創的なアイデアに満ちていました。バンパーガードを装着していることもあって、車両重量は430kgと意外なデータとなっていますが、それでも子どもたちのMy First Carとしては充分なパフォーマンスが発揮できたと思います。

 こどもの国の開園50周年に合わせて、保管庫にあった1台を日産テクニカルセンターの名車再生クラブでレストアし、大きな話題となったのは記憶に新しいところです。

車再生クラブでレストア

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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