チューナーブランド的な立ち位置にあるモデューロXの哲学とは
自動車メーカーにとって一流ブランドに登りつめるには大変な努力が必要であり、ときに子会社や別ブランドを作ってメーカーのブランド力を高めることがある。例えばBMWには「M」があるし(会社としては別会社扱い)「アルピナ」も別ブランドといって良いだろう(今年ブランドがBMWに移行)。メルセデス・ベンツにもかつてはまったく関係のない、いちチューナーだった「AMG」を支配下に置いたし、日本ではスバルと「STI」、日産の「ニスモ」や「オーテック」(2021年末にオーテックとニスモは統合)、トヨタのラグジュアリーブランドとして「レクサス」とスポーツ部門の「GR」がある。
またホンダには、ワークスチューナーとして「無限」があり、ホンダのサブブランドであり純正オプションのカスタマイズブランドとしてホンダアクセスが誕生させた「モデューロ」がある。近年ではコンプリートカーとして「モデューロX」を次々と投入。パーツを組み込むだけではなく、総合的に走りの質を引き上げ、上質さを追求したその作り込みはBMWの「アルピナ」的と解釈することができる。
モデューロXが誕生するまでのホンダアクセスの成り立ち
そんなモデューロXのコンセプトは、ホンダ車を知り尽くした技術者が作り出す、こだわりと時間と情熱をかけたコンプリートカーである。「運転が上手くなったように感じられるハンドリング」(パフォーマンス)、「洗練された独自のスタイリング」(デザイン)、「後席の乗員も快適な走行性能の追求」(コンフォート)の三つの約束を掲げており、単純な速さだけではない、上質さを兼ね備えるワンランク上のホンダ車、それがモデューロXだ。
簡単に歴史を振り返ると、1976年に用品部門として本田技研工業からホンダ用品研究所として独立。1977年にはホンダ用品技研に社名変更を行い、1987年に社名がホンダアクセスへ変わり、現在に至る。その間、さまざまな純正&カスタマイズパーツを開発(純正オーディオのギャザスなどが有名)しており、1994年にアルミホイールのブランドとして「モデューロ」が誕生。その後、エアロパーツやサスペンションもラインアップに加わった。これを機に、さまざまなドレスアップやチューニングパーツが設定され、ディーラーで納車前に装着できることから、家族に内緒でチューニングできる仕様としてファンに注目されるようになった。
あえてスポーツモデルではなく軽自動車やミニバンなどに設定
ここからはモデューロXの歴史を振り返りたい。2013年に「モデューロX」の第一弾モデルとしてN-BOXモデューロX」を発売。特徴は専用エアロパーツやローダウン仕様のサスペンション、本革巻ステアリングホイールのほか、専用15インチアルミホイールなどを備え、標準仕様のN-BOXでは満足できないカスタム派から支持された。
そして2015年にはN-ONEにもモデューロXをラインアップ。専用エアロバンパーやフロントグリル、サイドシルガーニッシュなどに加え、専用デザインマフラー、専用サスペンション、専用ブレーキパッド&アルミホイールなどの装備に加えて、トランスミッション(CVT)の制御系にも専用チューニングが施された。
その後、2016年には5代目ステップワゴンにモデューロXをラインアップ。2018年には同じくステップワゴンのマイナーチェンジモデルにも追加設定する。従来型の2Lガソリンに加えて、2Lガソリン+スポーツハイブリッドi-MMD搭載のハイブリッド仕様もラインアップされた。
2016年の初代ステップワゴン モデューロXでは、サスペンションはバネレートと減衰力を変更して、全高をスパーダに比べて約15mm低くした専用サスペンションで強化するとともに専用17インチアルミホイールを採用。さらに専用エアロパーツ(フロントエアロバンパー、エンジンアンダーカバー、リヤロアディフューザー)やロゴ入りの専用ブラックコンビシート、ステアリングホイールとセレクトレバーにディンプルレザーとピアノブララック加飾を追加して、ワンランク上の設えとなった。
これによって「モデューロX」はホンダ車のプレミアムバージョンとして定着。なお、このモデルから持ち込み登録(検査)に変更されている。