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90年代末のホンダ「HR−V」がコケた理由とは? 良車が失敗するのはセールスに問題あり!? 新型「ZR-V」の運命は?

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TEXT: 佐藤幹郎  PHOTO: 本田技研工業/Auto Messe Web編集部

武器としてハイパワーなエンジンが欲しかった

 では、なぜ初代HR-Vがヒットしなかったのか? 前述したが、見た目は万人受けするのであろうプレーンな印象ではあるし、動力性能や運転のしやすさや、走りの気持ち良さも十分。荷室の広さもライバル以上だし(トヨタRAV4 5ドアや日産ミストラル3ドア、スズキ・エスクードなど)、リサイクルや排ガスといった環境性能のレベルも一級品で、衝突安全性能も高水準だった。

 ただしパンチに欠けたことは否めない。まず当時のホンダはDOHC VTECが最大の武器であった。もちろん街乗りのSUVに1.6Lながら170psを発生させるB16A型が必要だったかと言えば否となる。だが、ホンダにはB16Aエンジンに匹敵する名機のひとつである1.6L DOHCのZC型(最高出力130ps/6800rpm、最大トルク144N・m/5700rpm)を搭載したスペシャルなグレードがあれば面白かったし、インテグラやシビックと同等のエンジンであれば、スーパーなコンパクトSUVとして話題をさらうことはできたはずだ。

 これは不埒な話題性ばかりが先行したS-MXも同様で、VTEC搭載の噂が絶えなかったモデルであったが実現ならず。S-MXにしてもHR-Vにしてもクルマのキャラクターとしてはどうなのだろう? とも思うが、当時のホンダファンはDOHC VTECに憧れていただけに、SUVだけど走りに手抜かりがないイメージを持たせることができれば、ホンダらしさを主張できたのではないか。

発売当初から3ドアと5ドアが欲しかった

 さらに後から追加された5ドアモデルが、デビュー当初からラインアップにあれば結果は違ったかもしれない。少し時代を先取りしすぎた初代ストリーム(2000年10月発売)を世に送り出したホンダだけに、使い勝手に優れた5ドアのSUVがあれば初代CR-Vのようにヒットした可能性もあった。

 さらにはコンパクトカーながら画期的な実用性を兼ね備えた初代フィットが2001年6月登場し、一大ブームを巻き起こしている。実際にストリームもフィットも発売直後から「○カ月待ち!」というニュースが流れ、それが売れ行きを加速させる現象を起こし、とくにセンタータンクレイアウトのフィットは燃費が良いのに広い室内と抑えられた価格がウリであった。初代HR-Vの5ドアモデル

 もちろん排気量も重要で、例えば1.6Lと2.0Lの税金は同じなので独身者であっても友人や家族を乗せられるミニバンのストリームが魅力的に見えるし、パーソナルカーであれば、税金の安い1.3Lのフィットの方が経済的。その意味では、HR-Vの1.6L SOHCエンジンでは中途半端だった。

同門に偉大なヒット作が続出したことが足枷に

 このフィットに関しては忘れられない言葉がある。初代フィットが登場したとき、新人セールスマンが商談に時間をかけることなくフィットが売れることから、ベテランセールスマンは「今の若手はレジ打ちのようにクルマが売れると勘違いをしている。クルマの商談はお客さまの要望に応える、実際に必要とされるであろう生活に見合うクルマを売り込むことがセールスの仕事であるのに、カタログを渡して仕様の違いを説明することだけが仕事だと思っている。これが続けばホンダは安いクルマしか売れなくなる」と話していた。

 昔から言われていることだが、ホンダの敵はホンダであり、初代ストリームはCVTではなくトルコンATで馴染み深いこととコンパクトな3列シートが魅力。初代フィットは同様のCVT(ホンダマルチマチックS)だが、現在にも継承されるセンタータンクレイアウトを採用する。床下に薄型の燃料タンクを配置することで、コンパクトでありながらも室内空間は広く、ラゲッジスペース容量もクラス最大を誇った(リヤシートをダイブダウンさせると最大847Lの荷室を実現)。スノーボードを載せた初代HR-Vの荷室

 つまり、HR-Vにとってライバル車は他銘ではなくホンダ車であったのだ。しかも初代フィットやストリームなど、売れるクルマばかり売るセールスが大多数いたことで、HR-Vという優れたクルマがありながら、売りやすいクルマを短絡的に販売してしまうセールスマンがいたことで、HR-Vの販売面で足枷になっていたのは事実。反面、ストリームもフィットも大ヒットしたことで、ホンダの経営戦略的には大成功であり、それはそれで間違いではないのだが……。

* * *

 兎にも角にも初代HR-Vは魅力的なSUVであった。だが発売タイミングに偉大すぎた同門のライバルが多すぎた。この結論は終生変わらないだろう。そして現在のホンダにとってもひとつの課題である、車種を問わずクルマを売れるセールスの不足が今のホンダの問題点だ。

 販売台数が多い車種は軽自動車ばかりで、偉大なフィットはN-BOXを初めとしたNシリーズの後塵を拝している。車両本体価格がどうしても高くなりがちな、いまの登録車の魅力をしっかり伝えることができれば、初代HR-Vではコケたが、新型ZR-Vはプレミアム性を兼ね備えた新時代のSUVとしてヒットすることだろう。あとはホンダがどのような販売戦略で高価格帯のミドルクラスSUVを売っていくのか? 大いに期待したい。

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  • プレーンで嫌みのないスタイリングが魅力だった初代HR-Vのプロポーション
  • 初代HR-Vのスタイリング
  • 初代HR-Vのリヤスタイル
  • 初代HR-Vの5ドアモデル
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