流麗なボディと先進のシャシー
その来し方はこのくらいにして、ジャガーEタイプのメカニズムを紹介していきましょう。フレームは、スチールパネルをプレスして成型したモノコックとチューブで組んだスペースフレームを組み合わせた、いわゆるハイブリッド・タイプでした。
このフレームに組み付けられるサスペンションは、前後ともにダブルウィッシュボーン式の4輪独立懸架を採用。フロントはトーションバー、リヤはツインのコイルスプリングで吊られていました。またブレーキは4輪すべてにダンロップ製のディスクブレーキを採用、最高速が150mph(約240km/h)、0−60mph(0−96 km/h)加速が6.4秒という高いパフォーマンスにも対処しています。
ラックアンドピニオン式のステアリングを採用していたことも大きなエポックとなりました。長いフロントノーズの下に搭載されたエンジンは、直6ツインカムのXK6型で、当初の排気量は3781cc(ボア×ストローク=87.0mmφ×106.0mm、最高出力は265ps)でしたが、1964年のマイナーチェンジを機に4235cc(ボア×ストローク=92.08mmφ×106.0mm。最高出力は265ps)版に換装されています。
1968年に登場したシリーズ2では引き続き、4235ccのXK6型が搭載されていましたが、1971年に登場したシリーズ3では新設計の5344cc(ボア×ストローク=90.0mmφ×70.0mm。最高出力は276ps)V12 SOHCに換装されていました。歴代モデルではツインカムが使用されてきましたが、V12では重量増加と重心位置が高くなることが懸念され、シングルカムが採用されたと伝えられています。
またツインカムにしてヘッド部分が大きくなることで、ボンネットに大きなバルジをつけることが必要になることも、SOHCが選ばれた理由のようです。
ジャガーXKシリーズの後継モデルとして、1961年のジュネーブショーで発表されたEタイプは、その流麗なプロポーションから「世界一美しいスポーツカー」と絶賛。レースではライバルとなるフェラーリのボス、エンツォ・フェラーリも「史上最も美しいクルマだ」と絶賛したとも伝えられています。
エンジン排気量は拡大の連続
そんなEタイプは1961年の3月に、まずは輸出専用で販売が開始され、4カ月後にはイギリスの国内市場に投入されています。その後1964年にはエンジンが4.2Lに拡大されるマイナーチェンジが行われ、1968年と1971年にビッグチェンジを施されて、それぞれシリーズ2、シリーズ3へと発展していきました。
シリーズ3に移行した際には4.2Lの直6から5.3LのV12にコンバートされています。そして同時に、オリジナルモデルはシリーズ1と呼ばれるようになりました。こうした変更は、最大のマーケットである北米の意向に沿ったものが多く、エンジン排気量を拡大したことに合わせて冷却系が強化され、最終モデルでは大型のラジエターに合わせてフロントのラジエターグリルも大型化されています。
とくにラジエターグリルの拡大に関しては否定的な意見も数多く聞かれていました。ちなみに、シリーズ1も末期となる1967年には、細かな変更が何度か繰り返されています。これらのモデルは、シリーズ1からシリーズ2に移行する中間的な仕様としてシリーズ1.5とも呼ばれていたのです。