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「イタリアの通関業者の倉庫に入って船積み待ちです」「だいじょうぶか……?」 メールでわかったフィアット500の歴史に感激【週刊チンクエチェントVol.04】

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TEXT: 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)  PHOTO: 嶋田智之/COOPERATION/チンクエチェント博物館

イタリアの車検証でわかった50年前の歴史

その翌日、伊藤さんがまたメールを送ってくださった。ビックリしたことに、今度はクルマそのものじゃなく、ターコイズブルー×レッド号のイタリアでの車検証を写したものだった。50年前のドキュメントだ。

フィアット500Lのイタリアの車検証

これを見て判明したことがいくつかある。まず、このクルマが1970年の12月17日にジェノヴァではじめて登録された、正真正銘のフィアット500Lであるということ。……いや、どちらかといえば人気の高い500Fをわざわざ人気の面でちょっとだけ落ちる500L仕様にする人なんていないだろうけど、つまりはそういうことだ。僕はよりシンプルでキョトンとした表情の500Lの方がちょっとばかり好みだったりするから、よし! と思った。

そしてシャシーナンバーが「6024399」である、ということ。まぁ貴重なクラシック・フェラーリだとかフォードGTだとかでもないわけだから、固有のシャシーナンバーを証明できたところでそう大きな意味はないのだけど、それでもなんだか嬉しい気持ちになる。50年の間ずっとイタリアの道を走ってきたこのクルマの、歴史のいちばんはじめのところに触れられた気がしたからだ。

あれ? もしやターコイズブルー×ブラウンじゃなくて、このターコイズブルー×レッド号に決まる流れになってる? ……まぁいいや。僕自身もかなり気持ちが入ってきちゃってるし、むしろ望むところ、みたいなものだから。

ともあれ、現地の法規上の問題があるからこのイタリアの車検証をクルマと一緒に日本へ送ってもらうことができるわけでもないのだけど、ボロボロになってセロテープがペタペタ貼られてるこうしたドキュメントを見ることができるっていうことそれ自体が、ちょっとばかり感動的。後で聞いたところによれば、本当はすべての車両で同じようなことをしたいところだけど現実はなかなかむずかしく、それでもできる車両ではするようにしてる、という。

チンクエチェント博物館はたしかにクルマを販売してるわけだけど、ただクルマが売れさえすればいいってわけじゃなくて、その背景にあるもの、周辺にあるものも大切にしてるってことがよくわかるお話だ。深い愛情あらばこそ、なのである。

それからまた数日後、僕は伊藤さんからのメールでターコイズブルー×レッド号がイタリアの通関業者の倉庫に入って船積みを待つばかりの状態になってることを知ったのだけど、そうして次第に気持ちが盛り上がってくるのと並行して、じつは「だいじょーぶか……?」という不安と疑問を感じるようになりはじめていた。

「お前の人生いつでもハズミと勢い……」というのは古くからの友達のセリフなのだけど、わが身を振り返るとなかなか否定はしにくい。だってそんなふうに生きて来ちゃってるようなものだから。でも、現実と照らし合わせてみると……だよなぁ、と……。

*チンクエチェント博物館
https://museo500.com/

■「週刊チンクエチェント」連載記事一覧はこちら

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  • 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)
  • 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)
  • 『Tipo』の編集長を長く務め、スーパーカー雑誌の『ROSSO』やフェラーリ専門誌『Scuderia』の総編集長を歴任した後に独立。クルマとヒトを柱に据え、2011年からフリーランスのライター、エディターとして活動を開始。自動車専門誌、一般誌、Webなどに寄稿するとともに、イベントやラジオ番組などではトークのゲストとして、クルマの楽しさを、ときにマニアックに、ときに解りやすく語る。走らせたことのある車種の多さでは自動車メディア業界でも屈指の存在であり、また欧州を中心とした海外取材の経験も豊富。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
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