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盛大にオイルを撒き散らせる「ゴニョン」(仮称)を「ゴブジ(ご無事)」号に改名! 裏で「595モメント」を4500キロも走らせて…【週刊チンクエチェントVol.19】

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TEXT: 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)  PHOTO: 嶋田智之

このあとはゴブジでありますように……

名古屋の「チンクエチェント博物館」が所有するターコイズブルーのフィアット「500L」(1970年式)を、自動車ライターの嶋田智之氏が日々のアシとして長期レポートする「週刊チンクエチェント」。第19回は「ゴニョン(仮称)あらためゴブジ号」をお届けします。

595モメントはアバルト595/695シリーズの一種の理想形ともいえるモデル

九州トリコローレで無事にお役目を果たすことができた僕は、往路と同じくアバルト595モメントに乗って帰路につくことになった。イベント終了後はチンクエチェントのスペシャリストでもあるカーショップ・トリミのお膝元、佐賀県の鳥栖に泊まって軽く打ち上げをし、翌日は福岡県久留米市にある名店『丸星中華そばセンター』で本場の伝統的な久留米ラーメンに舌鼓を打った。

そこから広島まで走ってひさびさの女友達と会い、彼女の通うお店でめちゃくちゃ美味い広島焼きをかっ喰らったうえに渋めのオーセンティックなバーで地元産のジンをたしなみ、いい具合に酔ったまではいいけど色っぽい展開があるはずもなく……。その翌日には尾道で高速道路を降りて尾道ラーメンを食べようと思ったのだけどうっかり通り過ぎちゃったので、福山サービスエリアであんまり期待してなかったわりには結構美味い尾道ラーメンにありつき、神戸のおふくろ宅に1泊。ゴニョン(仮称)ことターコイズブルーのチンクエチェントで九州に行けなかった鬱憤を、ほとんど「食」で埋めてたカタチだ。

そして神戸を出てチンクエチェント博物館に595モメントを返却し、名古屋からは新幹線で東京に帰るつもりだったのだけど、どうやら御都合がよろしくない様子。というか、その日はお休みだったのだ。

「そのまま東京に乗って帰っちゃっていいですよ。こっちにあっても誰も乗らないんで、返却はついでのときでいいですから」

「いやいやいやいや深津さん、さすがにそれはマズイでしょ。だってほとんどまっさらに近い状態でお借りして、もう1700km近くも走っちゃってるんですよ。東京まで戻ったら2000kmオーバーじゃないですか。そもそも名古屋に“ついで”なんて滅多にないですから」

「距離はいくら伸ばしてもらってもまったく問題ないです。実はモメント、探してた695ビポストのフルスペックと交替することになってるんです。なので、好きに乗っててください」

太っ腹というか何というか。もう、ただただ感謝、である。結局4月28日の夜に東京に戻ってコマゴマした仕事をやっつけたりやっつけられたりして、再び5月4日にかわいい姪っ子ちゃんの結婚式のために神戸へと走って数日おふくろ宅に滞在、8日と9日に六甲山でアバルトのWeb Magazineのための取材があったためにモデルとして登場してもらい、10日に名古屋に返却する予定だったのだけどまたしても都合が合わなくて東京まで乗って帰ることになり……。何だかんだと595モメントでは4500km以上を走ってしまうことになって、恐縮至極。ちょっとした罪悪感だ。

だが、アバルト595モメント、めちゃめちゃ楽しいクルマだった。基本的には595コンペティツィオーネの5速MT仕様と同じといえるのだが、イタリアの歴史あるスポーツ・パーツのスペシャリスト、バッキ・ロマーノ社の機械式LSDが組み込まれてることが異なっている。

そのおかげで、コーナーに元気に飛び込みながらブレーキングでしっかりと荷重を前輪に載せていき、クリッピングポイントの僅か手前辺りでアクセルペダルをほんの少し踏み込んでLSDをロックさせてやると、クルマはグイグイと、ステアリングを切ってる方向に向かって食い込みそうな勢いで曲がっていこうとするのだ。あまりに強烈に曲がるから早めに加速態勢にも入れるし、アンダーステアとも無縁。そう、595コンペティツィオーネのパンチの効いた走りのテイストを、「さらに曲がる」という味付けで大幅に色濃くしている感じだ。アバルト595/695シリーズの一種の理想形ともいえるモデルだな、と感じたものだった。

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