走行距離は4211kmのワンオーナー車
そしてミレニアム・イヤーの2000年。我々は再びオランダから大きなニュースを受け取ることになる。それは第一期スパイカー社が消滅してから75年、新たにスパイカーカーズ社が誕生し、その復帰作となる「C8スパイダー」が発表されるというものだった。
正確にはこのオープン仕様のC8スパイダーのほかに、クーペボディの「C8ラビオレット」も同時にデビューを飾っているのだが、そのデザインはいずれも当時のスーパースポーツ群とは一線を画する、ノスタルジックな雰囲気を感じさせるものだった。
アルミニウム製のスペースフレーム構造を持ち、リアには「キャノンポート」と呼ばれる通気口とグリルインテークをアクセントに、さらに前後のホイールはプロペラ型のスポークを持つ「エアロブレード」ホイールが与えられた。
インテリアも特徴的なダッシュボード・フェイシアやバックライト付きのクロームメッキ・メーター、オープンシフトゲート、それに飛行機の計器盤を模したトグルスイッチの列などで、スパイカーの斬新さと伝統を表現していた。
ミッドに搭載されたエンジンは、アウディから供給を受けた4.2L仕様のV型8気筒で、最高出力は400ps。これに6速のゲトラグ製ミッションを組み合わせ、もちろん後輪を駆動する。サスペンションはダブルウイッシュボーン形式の完全独立型で、カスタマーのリクエストによってはレース仕様のセッティングを選ぶこともできた。そんなC8スパイダーの生産台数はわずか121台だった。
今回RMサザビーズ社のアリゾナ・オークションに出品されたモデルは、現在のオーナーがカリフォルニア州のスパイカー・オブ・シリコンバレーに新車でオーダーしたもの。ミッドナイト・ブルーにマグノリアのキルト・レザー・インテリアというオプション・カラーで仕上げられ、特徴的なターンド・アルミニウム・トリムとエアロブレード・ホイールも選択されている。
新車からの走行距離はわずか2632マイル(約4211km)。純正のツールキットや各種ドキュメントもすべてが揃った状態での出品だ。RMサザビーズ社のエスティメート、すなわち予想落札価格は30万〜40万ドル(邦貨換算約4425〜5900万円)。入札は最終的に40万1000ドル(同5920万円)に達し、売り手としても満足した結果となった。
見る者を魅了する素晴らしいスポーツカーであること、印象的なカラーリング、きわめて少ない走行距離、そしてワンオーナー車であったことなどが、その数字の理由になったようだ。