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「F40キラー」の異名をもつアウディが1億円オーバーで落札!「スポーツ クワトロ」はどうして「別格」扱いなのか?

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TEXT: 山崎元裕(YAMAZAKI Motohiro)  PHOTO: 2024 Courtesy of RM Sotheby's

全長をさらに短くし戦闘能力をアップ

その1983年シーズンのために発表された、新たなグループBマシンが、300psの2.1L(正確にはそれまでのエンジンよりやや排気量は小さい)直列5気筒DOHCターボエンジンを搭載し、全長を320mmも短縮した2シーターのラリー・スペシャル「クワトロA1」であり、5月には早くも改良型の「クワトロA2」がデビューする。これら一連のモデルの活躍によって、アウディは数回にわたってWRCタイトルを獲得。それは4WD車として初めての偉業でもあり、他社に大きな影響を与えた。そしてクワトロの血統は、今回アリゾナ・オークションに登場した、「スポーツ クワトロS1」へと受け継がれるのである。

スポーツ クワトロS1は、1984年にデビューした「スポーツ クワトロ」のエボリューションモデル(必要生産台数である200台の10%を生産すれば、グループB車両の正常進化型として認められていた)に続くもので、さらに第2進化モデルともいえるこのS1は、通称「S1 A2」とも呼ばれる。

北米のアウディクラブ創立者が最初のオーナー

今回の出品車は、「5035」のシャシーナンバーを持つ1984年式のスポーツ クワトロで、最初のオーナーはアメリカのアウディクラブの創設者、フランク・ベドール・ジュニアであった。彼はアウディ公認のエントラントとしてモータースポーツに参戦するために、このスポーツ・クワトロを著名なアウディ・スペシャリスト、ディーダー・インツェンホーファー、ハインツ・レーマン、ハインツ・クルーゲらとレース用に改良。1988年にはアメリカン・トランザム・レースを完全に支配したため、新たな戦いの場をIMSAのGTOクラスに移行した。そしてここでも総合2位という成績を収めたのである。

また、新車時からベドール家が所有し続けているこのスポーツ クワトロは、「F40キラー」と呼ばれ、アウディのグループBホモロゲーションスペシャルの中でも最も魅力的な1台となっている。

今回のアリゾナ・オークションでは、RMサザビーズから37万5000~47万5000ドル(邦貨換算約5848~7409万円)というエスティメート(予想落札価格)が提示されたが、そのヒストリーを知るエンスージアストからの人気は高く、最終的な落札価格は75万8500ドル(邦貨換算約1億1182万円)にまで達するに至った。それはまさに驚きのリザルトだった。

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