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ブルース街道「ハイウェイ61」をダッジ「デュランゴ」で放浪! 中国人の始めた老舗レストランがまさかの絶品…!【ミシシッピ川ブルース旅_08】

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TEXT: 牧野森太郎(MAKINO Shintaro)  PHOTO: 宮澤佳久(MIYAZAWA Yoshihisa)

南部の激動を生き抜いた老舗レストラン

この日の夕食は、グリーンビルにある「Doe’s Eat Place」というレストランだ。このレストランの歴史が面白い。

Big Doeの一家は中国人で、はサンフランシスコからミシシッピ州に流れ着いた。19世紀のアメリカにおいて鉄道施設は国をあげての大事業だった。鉄道は東西の海岸から同時に作り始め、西から東に線路を敷く作業は中国人が多く担った。Big Doeも鉄路延伸とともに南部にやってきたのだった。

彼は、この地で「パパズ・ストア」という雑貨屋(grocery store)を始める。綿花産業全盛の時代で店は繁盛した。しかし、1927年のミシシッピ大洪水で全壊。それをきっかけに密造酒の世界に入り、フォード「モデルT」を使って商売を広げた。

そして、そこで稼いだ資金で、1941年、彼と妻のMamieが南部名物のホットタマーレを売るレストランを開業したのだった。当初は黒人だけを相手にする安酒場だったという……、まさに南部の激動を生き抜いた店なのだ。なお、ホットタマーレとは、とうもろこしの粉とひき肉を混ぜ、とうもろこしの薄い皮で巻いて蒸した料理だ。

ヴィクスビルに到着するとビックリする報せ……

現在、Doe’s Eat Placeは息子と孫たちが引き継いでいるが、店の真ん中にあるキッチンや客席には1940年代の雑貨店の面影が残っている。名物は看板メニューのホットタマーレと分厚いステーキ、そしてシュリンプ料理だ。テイクアウトをして宿で食べる予定だったが、あまりに話が面白く、店で食べることになってしまった。

夕食後、ハイウェイ61を一路、南下。Airbnbを予約してあるヴィクスビルを目指した。ヴィクスビルはミシシッピ・デルタの南西の端。ぼくたちのデルタの旅の最終目的地だ。

ところが、到着してびっくり。ホストのティムさんが顔を合わせるなり、こう言ったのだ。

「ハリケーンが来ているよ。明日は大荒れだ。ニューオリンズに帰る? やめたほうがいい。もう一泊しなさい(笑)」

ハリケーン!? まったく予想外の展開になり、ぼくたちは顔を見合わせた。

* * *

このミシシッピの旅で筆者が取材した内容を1冊にまとめた本が2025年3月13日に発売となった。アメリカンミュージックのレジェンドたちの逸話とともに各地を紹介しているフォトエッセイ、興味のある方はぜひチェックを。

>>>『アメリカ・ミシシッピリバー 音楽の源流を辿る旅』(産業編集センター)

■「ミシシッピ川ブルース旅」連載記事一覧はこちら

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  • 牧野森太郎(MAKINO Shintaro)
  • 牧野森太郎(MAKINO Shintaro)
  • アウトドア誌、ライフスタイル誌などの編集長を経験。2001年にアメリカでキャンピングカーを購入して以来、国立公園を訪ねることをライフワークとする。著書に『アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅』『自分自身を生きるには 森の聖人ソローとミューアの言葉』(ともに産業編集センター)がある。カリフォルニア州シェラネバダ山脈のジョン・ミューア・トレイルを計30日かけて踏破したレポートがデルタ航空機内誌「sky」に掲載され、カリフォルニア観光局のメディア・アンバサダー最優秀賞を受賞。
著者一覧 >

 

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