ポルシェ純正のジュニアカー、花の都パリのオークションに登場
クラシック/コレクターズカー・オークション業界最大手のRMサザビーズ欧州本社が、レトロモビルに付随する大規模イベントとして、2025年2月4〜5日に開催した「PARIS」オークションにおいて、素晴らしいジュニアカーたちの数々が出品されていました。今回は、ポルシェ本社がオフィシャル商品として販売していたというヒストリーを持つポルシェ「911ジュニア」を俎上に載せ、その概要と注目のオークション結果について、お伝えします。
ポルシェ純正の取扱説明書も残された、真のコレクターズアイテム
1980年代初頭に登場した「ポルシェ911ジュニア」は、単座席ないしは2座席の子供用自動車として当時のポルシェ正規ディーラーで販売された、ポルシェAGの公式ライセンス商品。
ボディカラーは、今回の「PARIS 2025」オークションに出品されたツインシート車のようなレッドのみが設定された。また、2シーターモデルは225台しか生産されなかったといわれており、この個体には「131」のシリアルナンバーが入っている。
パワートレインは、2.5psを発生するガソリンエンジンとリバースギアつきの2速ギアボックスが組み合わされ、最高速度は30km/hをマークすると標榜されていた。そのかたわら、制動力はディスクブレーキによってまかなわれ、本格的な空気入りタイヤ、灯火器、ホーンなども装備されている。
当時ポルシェは、2シーター版のポルシェ911ジュニアにのみ、自社で発行したマニュアルと、車両のコンポーネントの詳細を記した小冊子を付属させていたとのことである。しかし、これらの小冊子が現存する事例は非常に珍しいそうで、この個体はまさしく特別な存在。1980年代のポルシェ愛好家にとって素晴らしい「ピリオドアイテム」といえるだろう。
RMサザビーズ欧州本社は、現在の所有者との協議のうえ、1万5000ユーロ~2万ユーロ(邦貨換算約245万円〜322万円)というエスティメート(推定落札価格)を設定。そして2月4日に迎えた競売では、エスティメート上限を大きく超える2万4000ユーロ。現在の日本円に換算すれば約390万円という、たとえば「987ボクスター」あたりならば、そこそこ良いコンディションの中古車が買えそうな高額で落札されることになった。
今となっては、子どもを乗せて走らせるという生来の目的よりも、かつてポルシェ正規ディーラーのショールームにて、1/1スケールの911と並んでディスプレイされていた時代の雄姿を、自身のガレージにて再現するためのコレクターズアイテム……、という意味合いの強くなった911ジュニアカーながら、やはりポルシェ公式の商品だったというヒストリーこそがコレクター心をくすぐる動機となり、ひいてはこの高価なハンマープライスにも影響したとみて、間違いはあるまい。