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イタリアで生産されたOEM版ミニ・クーパー1300の意外なる落札価格

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Bonhams|Cars

現在のオークション相場とは考えにくい低い落札価格

今回のオークション出品者でもある現オーナーからの申告によると、このほど「THE BONMONT SALE 2025」オークションに出品された、このイタリア製のミニ・クーパーは、スイスで新車として登録・納車され、現在では同国にて自動車税や車両保険などで優遇される「ヴェテラン(Veteran)」の地位を確立している個体。BMCミニ譲りとなる「アーモンドグリーン(Almond Green)」のボディに、イノチェンティ独自のブラックのビニールレザー張りインテリアが、新車時代から現在に至るまで維持されている。

この個体はこれまでレストアされていないにもかかわらず、全体的に良好なコンディションにあり、オークション公式カタログ作成時点での走行距離は6万7860km。スイス国内の自動車登録証明書「カルト・グリーズ」も車両に添付されているとのことであった。

イノチェンティ ミニ クーパーについて、ボナムズ社では3万スイスフラン~3万5000スイスフラン(邦貨換算約552万円〜644万円)という、このモデルの現況における相場感を反映したエスティメート(推定落札価格)を設定。そのうえで現オーナーとの協議の結果「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」での出品となった。

この「リザーヴなし」という競売形態は、価格の多寡を問わず落札できることから、とくに対面型オークションでは会場の雰囲気が盛り上がり、ビッド(入札)が跳ね上がる傾向もある。しかしその反面、たとえ価格が出品者サイドの希望に到達しなくても、強制的に落札されてしまうという怖いリスクも同時に内包している。

今回の「THE BONMONT SALE」では、出品者サイドにとっては最低落札価格未設定の「負の側面」が現れてしまう。すなわち、思いのほかビッド(入札)が進まなかったようで、競売締め切りの時点でエスティメートよりも遥かに安価な1万8400スイスフラン。現在のレートで日本円に換算すれば、約340万円で競売人のハンマーが鳴らされることになった。

ちなみに、昨2024年6月に開催されたRMサザビーズ「Cliveden 2024」オークションでは、同じくイノチェンティ製のミニ クーパー1000MK-IIが2万5300英ポンド、当時の為替レートで日本円換算すると約500万円で落札された実績もあることから、今回のハンマープライスが現在の国際マーケットにおける相場価格とは考えにくい。

ありていに言ってしまえば、出品者側にとって不本位であるいっぽう、買い手側にとってはリーズナブルな買い物ができた……、ということなのであろう。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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