最高出力を実現した専用エンジンとシャシー
ミッドに搭載されたエンジンは、新たに「M838TL」型という型式が与えられた3.8LのV型8気筒ツインターボだ。軽量なコネクティングロッド、675LTのためにビスポークされたカムシャフト、電子制御式リサーキュレーション・バルブなど、構成部品の多くが専用品である。最高出力は675ps、最大トルクは700Nmを達成した。
1000kgあたりの最高出力は549psであり、当時としてはクラス最強のスペックだった。このエンジンには、マクラーレンの誇るデュアルクラッチ式の7速SSG(シームレス・シフト・ギヤボックス)が組み合わされた。SSGもソフトウエアの見直しや、シフト時に瞬間的にイグニッションを停止させる制御の導入によって、変速時間が大幅に短縮されている。
エンジンの強化に対応し、シャシーも675LT専用の仕様に改められた。ステアリングは650Sから10%以上も高速化。サスペンションでは軽量なハードウエアが採用されたほか、スプリング・レートもフロントで27%、リアで63%も引き締められた。
ブレーキシステムにはカーボンファイバー製のディスクローターを装備。タイヤはサーキット走行にフォーカスして専用開発されたピレリ製「Pゼロ・トロフェオR」が標準装備となる。ちなみに、これに組み合わされるスーパーライトウエイトアロイホイールは、アルティメット・シリーズの「P1」に装着されていたものよりも、1本あたり800gも軽量なスペックを持つ。
世界に1台のMSOビスポークに対するオークション市場の評価
今回クエイル・オークションに出品された675LTは、2016年に生産されたクーペである。マクラーレン・フィラデルフィア(アメリカ)から新車でデリバリーされた個体だ。
デルタレッドとシリカホワイトの、いわゆるマルボロ・レーシング・スタイルのペイント、カーボンブラックのレザーとアルカンターラのインテリアなどは、マクラーレンのビスポーク部門MSO(McLaren Special Operations)の手によるものだ。カスタマーは追加コストとして5万6295ドル(約830万円)を支払っている。当然、これと同じ仕様を持つ675LTはほかには存在しない。
ボナムズ社によれば、この出品車にはヒーター付きのパワーメモリーシート、デュアルゾーン・オートエアコン、メリディアン・サラウンドサウンド・システムなども装備されているという。同社ではエスティメート(推定落札価格)に26万5000ドル〜32万5000ドル(邦貨換算約3922万円〜約4810万円)を掲げていたが、その落札価格は31万3000ドル(邦貨換算約4607万円)で、ボナムズ社が発表していた予想落札価格の範囲内に収まった。675LTが持つパフォーマンスと希少性を考慮すれば、この価格は意外とお買い得な結果だったのかもしれない。













































