日常使いでストレスを感じないように不便なところは改良する
日本では“ワーゲンバス”という愛称で呼ばれるフォルクスワーゲンの1BOXボディ。ドイツ本国では、VW「トランスポーター」と総称されますが、アメリカを中心に各国で「タイプ2」と呼ばれるようになった理由は、年代や販売地によって車名が異なるためです。ビートルの「タイプ1」や3BOXの「タイプ3」と同様に、空冷水平対向4気筒エンジンを車体後部に搭載しているタイプ2は、日本でも熱烈なファンは数多く存在します。そのようなひとりのオーナーにお話を聞きました。
私設スバル博物館を運営者が選んだ普通に乗れて直せる旧車
福岡県北九州市で開催されたクラシックカーストリート黒崎の会場で、VW「タイプ2」の隣に設置されたバス停の時刻表部分に書かれていたのは、このクルマのスペックだった。そんなユーモアあふれる展示をしていたのは久士目慎一さん。通称ワーゲンバスのおじさんだ。
久士目さんは、もともとスバルの古い車種が大好きで、タイプ2の前に所有していたのは1969年式のスバル「FF1」である。加えて、さまざまなスバル車をかき集め、かつては私設の別府スバル博物館を運営していた。
「私は、たとえ旧車であっても、日常で普通に乗りたい性格。以前所有していたFF1は12〜13年ほど愛用していたが、パーツ入手がどんどん困難になり、自分が望む使い方に合わなくなってしまった。そこでパーツ入手に悩むことなく、旧車と呼べるクルマがないものかと探した結果、空冷時代のフォルクスワーゲン車に辿り着いた」
アメリカを中心に大ヒットしたフォルクスワーゲンの空冷エンジン・シリーズは、純正部品に限らず、さまざまな社外メーカーからあらゆるパーツが現在でも販売されている。極論すれば、それらのパーツでクルマが1台製作できてしまうレベルだ。
「それに、スバルも当時のフォルクスワーゲンも水平対向エンジンを採用しているので、相通じる部分に惹かれた。ちなみにタイプ2を選んだ理由は、商用車系が好きだからだ。私設博物館を運営するほど思い入れが強かったスバルを捨てたという負い目はあったが、古いクルマを日常で使うという自分の主義を貫くには、こうするしかありませんでした(笑)」
出先でトラブルに遭遇しても自分で修理
購入当初は、ハンドルやシフトの遊びが酷く、真っ直ぐ走らせるのも困難であった。乗りにくいから、購入したことを後悔したこともあったそうだが、旧車に長期間親しんできただけに、いつの間にか人間がクルマに馴染んでいた。
「どんなトラブルが出ても、修理するための部品はアメリカから入手できるのでストレスフリーだ。社外品で良ければ、パーツは手に入る。フォルクスワーゲンやアメリカの凄さを痛感した。でも、部品の精度は悪い。ゴムの品質、外装パーツのフィッティングの悪さなどいろいろあるが、それを気にしていたら、こういうクルマには乗れない(笑)」
しかも、構造がシンプルなため、万が一トラブルにあっても、修理は比較的簡単だという。これまでにクラッチケーブルが切れたことが3回ほどあるそうだが、そのうち2回は路上で交換して事なきを得た。重整備はできないが、こうしたトラブル修理はできるだけ自分でこなす。ちなみにこの経験により、現在はクラッチケーブルの予備は3本も常備。もちろんさまざまな修理に対応できるようにするため工具も積みっぱなしだ。
「クーラーは購入当初から後付けタイプが装着されていた。私が入手してからは、間欠ワイパーに変更し、各鍵をリモコンロック式にしている。できることは自分でやりながら、日常でも便利に使えるようにと、いろいろカスタムを施している」
久士目さんが言う「日常使い」という言葉は、単純に乗り回すことを指すわけではない。日常でもストレスがないように、不便な部分は改良し使い勝手を良くしていくことも意味しているのだ。


























































