自動車発祥前は馬の乗り心地を良好にするアイテムを開発
レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之氏が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のお題は「黒地に一頭の馬が描かれたコンチネンタルのロゴ」。タイヤメーカーと馬という組み合わせに、少し意外さを感じた人も多いのではないでしょうか。なぜクルマとは無縁に見えるモチーフが選ばれたのか。その理由をたどっていくと、ドイツという国の歴史や、走ることへの真摯な姿勢が見えてきます。派手さではなく、信頼を積み重ねてきたブランドの原点を紐解いてみましょう。
馬との深い関係をもつ創業地への敬意を込めて
コンチネンタルタイヤは、東京オートサロン2026で初めて自らの独立したブースを出展しました。個人的にはドイツのタイヤには並々ならぬ興味がありましたので取材に赴いたのですが、ブースを目にしてまず首を傾げたのは、そのロゴマークです。黒地に描かれた、凛と立ち上がる一頭の馬だったからです。なぜタイヤメーカーのロゴが馬なのか。その答えは、驚くほど誠実な歴史にあります。
ドイツのコンチネンタルタイヤAGは、1871年にドイツ・ハノーファーで創業しました。カール・ベンツがガソリン自動車を発明したのが1886年、ヘンリー・フォードがT型フォードの生産を開始したのが1908年ですから、クルマが普及する前からコンチネンタルは活動していたことになります。
ちなみに、コンチネンタルが創業したハノーファーはニーダーザクセン州に属し、その象徴が「白馬」です。コンチネンタルのロゴは、ニーダーザクセン州への誇りを表現しているのです。
しかもハノーファーという街は、馬と無縁な場所ではありません。ドイツでも歴史ある競馬場があることでも有名です。ここでは今も、競走馬たちが力強く地面を蹴り、観客はその脚運びや持久力に一喜一憂します。馬はこの街にとって過去の紋章ではなく、現在進行形の存在なのです。
これで、コンチネンタルのマークが馬であることに納得できますね。
さらに加えるならば、コンチネンタルはかつて競走馬の蹄鉄と蹄の間にクッションを開発していました。競走馬が安心して走れるように、衝撃を吸収する素材を挟み込んだのです。
しかも競走馬ですから、俊敏に駆け回る必要があります。どの馬よりも速く走らねばなりません。当時は競馬が盛んでしたから、乗馬も少なからず普及していたはずです。となれば、乗り心地も整えなければなりません。そうです、すべての要素がクルマのタイヤと共通しているのです。
ハノーファーの競馬場で、観客が本当に信頼するのは、派手な一頭ではありません。最後まで脚を使い切り、確実に走り切る馬です。コンチネンタルがロゴに託したのも、同じ思想なのでしょう。
そう考えると、コンチネンタルのコーポレートマークである「馬」が意味深く感じられますね。








































