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日本のトラック業界に激震!明るい未来だけではない日野自動車と三菱ふそうの経営統合【Key’s note】

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TEXT: 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)  PHOTO: トヨタ(TOYOTA)/DAIMLER

  • 三菱ふそう スーパーグレート
  • 日野 レンジャー
  • 日野自動車と三菱ふそうトラック・バスは経営統合し、両社を傘下に収めた持ち株会社「アーチオン」を設立した
  • (左から)トヨタ自動車 代表取締役社長・CEO 佐藤 恒治、日野自動車 代表取締役社長・CEO 小木曽 聡、新統合持株会社CEO 兼 三菱ふそうトラック・バス 代表取締役社長・CEO カール・デッペン、ダイムラートラック社 CEO カリン・ラドストロム

関連会社からの独立で自由な経営を手に入れた

レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之氏が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のお題は、日野自動車と三菱ふそうトラック・バスが経営統合し、新たに持ち株会社「アーチオン」が誕生です。新会社が本当の意味で“強い組織”になれるのか、注目が集まっています。

新会社「アーチオン」が背負う旧弊の負債という財務リスク

日野自動車と三菱ふそうトラック・バスは経営統合し、両社を傘下に収めた持ち株会社「アーチオン」を設立する。企業の統合という報は、常にロマンを誘うものだ。日野自動車はトヨタ自動車の連結子会社から外れ、自由な経営が可能になる。三菱ふそうも、ドイツのダイムラーの連結対象から外れる。新しいパートナーと手を結び、ひとつ屋根の下に力を集め、強くなる道を歩み始めたのである。

しかし、統合は光に照らされているだけではない。日野自動車と三菱ふそうの統合の舞台裏には、決して看過できない“闇”が横たわっている。

まず目を逸らせないのは、両社が抱える財務リスクである。日野は過去のエンジン認証不正問題に起因して、一連の特別損失を計上した。2025年3月期には2800億円近くの特別損失を含み、最終赤字に転じたとの報道もある。

統合後、新会社がこれら“旧弊の負債”まで背負うとなれば、初動から財務の足かせとなることは必至だ。

組織の巨大化で失うスピード感!異なる企業文化での取捨選択も必要だ

合併企業でもっとも犠牲になりやすいのは、“意匠”や“魂”を含めた企業文化である。日野は長年にわたるエンジン技術、商用車のノウハウを誇ってきた。一方、ふそうにはドイツ系資本の影響や異なる企業思想も存在する。

意思決定の軋轢、技術方針のぶれ、ブランド名の選択、どこを残しどこを捨てるか。これらの“引き算”がスムースに進めば良いが、そう簡単ではない可能性もある。

この統合は国際競争力の強化に繋がる可能性があるが、国が異なることはつまり文化も異なることを意味する。これが“リソース分散”や“意思決定遅延”を招く恐れがある。統合前以上の無駄な投資や、技術迷走の危険性が残る。

組織を大きくすればするほど、意思決定は鈍くなる。稟議が長くなる、決裁が階層に溺れる、変化への機敏性を失う。巨大新会社では、現在の経営に欠かせない”スピード”が薄れる危険性があるのだ。

ともあれ、日本の巨大メーカーの統合が成功し、日本経済の発展に寄与することを期待したい。この統合が真に成功するかどうかは、明るい統合の詩ではなく、暗闇の中でどう舵を取るかにかかっている。

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  • 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
  • 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
  • 1960年5月5日生まれ。明治学院大学経済学部卒業。体育会自動車部主将。日本学生チャンピオン。出版社編集部勤務後にレーシングドライバー、シャーナリストに転身。日産、トヨタ、三菱のメーカー契約。全日本、欧州のレースでシリーズチャンピオンを獲得。スーパー耐久史上最多勝利数記録を更新中。伝統的なニュルブルクリンク24時間レースには日本人最多出場、最速タイム、最高位を保持。2018年はブランパンGTアジアシリーズに参戦。シリーズチャンピオン獲得。レクサスブランドアドバイザー。現在はトーヨータイヤのアンバサダーに就任。レース活動と並行して、積極的にマスコミへの出演、執筆活動をこなす。テレビ出演の他、自動車雑誌および一般男性誌に多数執筆。数誌に連載レギュラーページを持つ。日本カーオブザイヤー選考委員。日本モータージャーナリスト協会所属。日本ボートオブザイヤー選考委員。
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