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新1.4リッターエンジンはWLTCモード燃費25.7km/Lで超静か! 日産新型「キックス」に日産の新技術と覚悟が宿る!?【Key’s note】

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TEXT: 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)  PHOTO: 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)  FACT CHECK: 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)

木下隆之が激戦区へ挑む日産新型「キックス」の走りを試した

レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之が毎週発信しているのが、人気連載コラムの「Key’s note」だ。今回のテーマは、日産が総力戦で激戦区のコンパクトSUV市場へ投入した新型「キックス」。第3世代e-POWERやe-4ORCEといった最新技術を惜しみなく採用、さらにボディサイズを拡大して上質感を高めた最新モデルの走りと、そこに宿る日産の覚悟を紐解いていく。

電動化技術を凝縮した第3世代e-POWERを搭載する

日産 新型キックスが完成した。国内52万台を超えるコンパクトSUV市場は、いまや自動車業界最大級の激戦区である。人気車種がひしめき合い、一歩でも油断すれば埋もれてしまう群雄割拠の戦場だ。そのド真ん中へ、日産は満を持して新型キックスを送り込んできた。

その気迫は、クルマを一目見れば伝わってくる。パワートレーンを第3世代「e-POWER」へ刷新しただけではない。日産が誇る伝家の宝刀「e-4ORCE」を新たに投入し、さらに価格を抑えたエントリーモデルまで用意した。まるで総力戦に臨むかのように、持てる技術を惜しみなく注ぎ込み、盤石の布陣を敷いてきたのである。

見どころのひとつは、日本初採用となる「5-in-1 e-POWER電動パワーユニット」だ。モーター、発電機、減速機、増速機、そしてインバーターという5つの主要ユニットを一体化。電動化技術を凝縮することで、走りの質感とエネルギー効率を高い次元で両立させている。

発電用エンジンも新開発である。排気量は1.4リッター。ロングストローク化と高圧縮比化によって、発電だけに特化した設計思想を貫いた。ご存じのように、e-POWERは一般的なハイブリッドとは考え方が異なる。エンジンが駆動輪を回すことはなく、その役割はあくまで発電だけ。発電した電気でモーターを駆動し、クルマを走らせる。つまり走行フィールそのものはEVなのだ。

だからこそ、発電専用エンジンという発想が生きる。通常のハイブリッド車は、車速に応じてエンジン回転を細かく変化させる必要がある。しかしe-POWERにはその制約がない。限られた回転域だけで最高効率を追求すればよいのである。その自由さを逆手に取り、効率を極限まで磨き上げた。

頻度を抑えたエンジン始動がEVのような静寂をもたらす

発電用エンジンの性能は72kW、115Nm。フロントモーターも105kW、315Nmへと強化された。数字だけ見ても進化は明白だが、実際に走らせると、その違いはアクセルを踏み込んだ瞬間にはっきりと伝わってくる。

その力が実に滑らかだ。従来以上に電力供給へ余裕が生まれたことで、高速域まで途切れることなく加速が続く。アクセルに応えるたび、背中を押される感覚が自然に伸びていく。数字以上に洗練された加速フィールを手に入れた印象である。

発電効率が高まった恩恵は、それだけではない。エンジンが始動する頻度そのものが劇的に減った。市街地を走っていると、「今、本当にエンジンは動いているのだろうか」と思うほど静かだ。感覚的には、従来の4分の1ほどしかエンジンが始動していないように感じられる。まるでEVで街を流しているかのような静寂が続くのである。静けさとは不思議なもので、音が消えるだけではない。心のざわめきまで少しずつ静まっていく。信号待ちで流れる時間さえ穏やかになり、都会の喧騒から一歩距離を置いたような感覚になる。

これまでe-POWERは、高速道路での燃費が課題と言われることもあった。しかし第3世代では、その弱点も大きく改善された。WLTCモード燃費は25.7km/L。ライバルとの燃費競争でも、もはや後塵を拝することはないだろう。

一方、e-4ORCEもまた、単なる雪道対策では終わらない。乾いた舗装路をゆったり流していても、その恩恵は確かに感じられる。前後左右へ駆動力を緻密に配分し、ブレーキ制御まで統合することで、旋回中の姿勢が実に穏やかだ。カーブへ吸い込まれるようにノーズが入り、ドライバーは余計な修正舵を当てる必要がない。四輪が路面をしっかりと掴みながら、1枚の絨毯の上を滑るように曲がっていく。

もちろん雪道では絶大な安心感をもたらすだろう。しかし、その真価は都会でも発揮されるのだと改めて感じた。雨の日の交差点、高速道路のレーンチェンジ。そんな日常の何気ない場面でこそ、この制御技術はドライバーを静かに支えてくれる。

拡大されたボディサイズや装備の充実がワンランク上の上質感を生み出す

ボディサイズも常識的な範囲で拡大された。全長は75mm伸びて4365mm、全幅は40mm広がり1800mm、全高は10mm高くなって1615mmとなる。数字だけを見れば、コンパクトSUVとしてはひと回り成長した印象だ。しかし、その恩恵は室内に乗り込んだ瞬間に理解できる。

とりわけ運転席と助手席の距離に余裕が生まれたことは大きい。肩が触れそうだった従来モデルとは違い、互いに自然なパーソナルスペースが確保され、クラスを一段引き上げたような上質感を味わえる。

後席も広くなり、リクライニング機構まで備わった。さらに日産自慢のゼログラビティシートを採用。今回は試せなかったが、長距離移動でも身体への負担は少なく、家族全員が快適な時間を過ごせるだろう。価格帯は従来より上昇したものの、装備を見直した「Xシンプルパッケージ」を用意したことも見逃せない。

最上級のe-4ORCE仕様は424万8200円。一方で、299万9700円から手に入るエントリーモデルも設定された。ライバルはトヨタ「ヤリスクロス」やホンダ「ヴェゼル」になるだろう。だが日産は、技術力だけを誇示するのではなく、価格でも真っ向から勝負を挑んできたのだ。

質感は高く、走りはさらに磨かれ、中身は驚くほど濃い。新型キックスは単なるモデルチェンジではない。いまの日産が持つ技術と覚悟を、1台に凝縮したクルマである。このキックスには、日産復活の狼煙となるだけの資質が、確かに宿っているように思えた。この1台が街に溢れる日こそ、日産復活の本当の号砲になるのかもしれない。

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  • 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
  • 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
  • 1960年5月5日生まれ。明治学院大学経済学部卒業。体育会自動車部主将。日本学生チャンピオン。出版社編集部勤務後にレーシングドライバー、シャーナリストに転身。日産、トヨタ、三菱のメーカー契約。全日本、欧州のレースでシリーズチャンピオンを獲得。スーパー耐久史上最多勝利数記録を更新中。伝統的なニュルブルクリンク24時間レースには日本人最多出場、最速タイム、最高位を保持。2018年はブランパンGTアジアシリーズに参戦。シリーズチャンピオン獲得。レクサスブランドアドバイザー。現在はトーヨータイヤのアンバサダーに就任。レース活動と並行して、積極的にマスコミへの出演、執筆活動をこなす。テレビ出演の他、自動車雑誌および一般男性誌に多数執筆。数誌に連載レギュラーページを持つ。日本カーオブザイヤー選考委員。日本モータージャーナリスト協会所属。日本ボートオブザイヤー選考委員。
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  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 1960 年生まれ 大学卒業後ベストカーガイド編集部勤務。1990年オートスポーツ誌に転職、1992年F1速報誌(アズエフ)編集長。1995年月刊ビデオマガジン編集部に転職、1996年ベストモータリング編集長(のち局長兼務)。2005年ネコパブリッシング・イベント本部長/4輪編集局長兼務。2015年交通タイムス社に転籍、2020年より現職(総編集局長)自動車の分野に問わずオールマイティだが、特に旧いモータースポーツとクラシックカーに造詣が深い。愛車は1969年DATSUN Fairlady SRL311/YAMAHA RD250ほか

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