クルマを文化する
REAL CAR CULTURE

AUTO MESSE WEB

クルマを文化する
REAL CAR CULTURE

AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

  • TOP
  • SPORT
  • ラリー・モンテカルロ・ヒストリックに挑む日本の学生チーム「自動車を通して学べるものとは」
SPORT
share:

ラリー・モンテカルロ・ヒストリックに挑む日本の学生チーム「自動車を通して学べるものとは」

投稿日:

TEXT: 齋藤 優  PHOTO: 東京大学「チーム浪漫」、Auto Messe Web編集部

机上の空論ではない1年の実体験は不滅

 彼らが挑戦する参戦プロジェクト。特殊なのは、いわゆる学内の「部活的」な動きではなく、毎年、学生たちはイベント実戦を経験した先輩たちからの教えを伝えてもらうこともなく、スタッフメンバーそれぞれがゼロから出発。1年でプロジェクトを完結してゆくという点にある。

 これまで9年度の遂行で構築されてきた教師やドライバー陣、参戦車両、サポーターメンバーたちの体制はあるものの、国際ラリーへの参戦車両の立ち上げ、参戦資金調達のためのスポンサー対応、海外への自動車通関カルネ、スタッフ滞在先スケジュール統括、広報活動などなど、学生メンバーみずからが初めて経験する事になるさまざまな手続きすべてを、それぞれの役割でこなしてゆくのだ。

「工学発展した日本であってもクルマの良さが分かってもらえなくなる危惧があります。工業大国である日本ですが、若い人たちには旋盤といってもナニそれ? という子たちも多い。ボルト一本であってもクルマを作り上げてきたものを実体験で理解して知る、そんな経験から広がりは生まれるのではと思います」と、プロジェクト創始から関わってきた東京大学の草加浩平特任教授。

 世界の一般公道を舞台に展開されるラリーという自動車競技に参戦するからこそ触れ合えるものには、まさに社会生活に根ざしたものから学びえる揺るぎない文化もあるだろう。いつしか学生たちへの着物着付け伝授も生まれ、学生が礼装の着物でラリー表彰パーティに出席するしきたりとなるなど、国際交流での文化発信も展開されている。

 さて、ラリー参戦体制に戻れば、ホンダ・シビックRSのレストアメンテナンスに関してはホンダテクニカルカレッジ関東が、カローラレビンに関しては東大側が中心に進めてきたという。

 さらに目を引くのは今年初投入となる日産チェリーX1-R。その始まりは車内を見ても降り積もった錆のラインが引かれているような状態のクルマだった。

「サビでボロボロだったチェリー。ホンダ学園のみんながフルレストアとエンジンチューンを手掛け、東大生がラリーコンピュター作成やロールケージの取り付けなどを施してラリーカーへと改造しました。初めての作業がほとんどで試行錯誤の連続でしたね」。

 フランスで注目されるようにとトリコロールカラーへ。以前の日産のワークスカラーとシンクロさせるデザインで美しく蘇らせた。このマシンを篠塚建次郎さんが走らせるのだが、ゼッケンは”23″で大会の開催周年と同じ。また、元トヨタワークスドライバーでもある松波登さんが”27″番で、こちらもTE27レビンにシンクロした、験担ぎなゼッケンとなっている。

「今年も参戦するTE27は初回登録が1972年12月の後期型。4月にこの車と出会ったときはエンジンのオイル漏れや灯火系の接触の悪さが見られ、いかにも昔の車、という感じがありました。今期の活動ではエンジンのオーバーホールや配線の引き直しなどを中心に仕上げてきました。私たちが整備したエンジンで、ヨーロッパの山道を稲妻のように力強く走り抜けて欲しいです。」

「試練は待っているけれども、乗り越えるものです。凄いじゃんと思ってもらえたら…」

 成績を競うスポーツ競技参戦ではあるが、伝統のラリー文化継承の一役を担っていることにもなる学生たち。天候状況変化の中で何があっても臨機応変、試練を乗り越えゴールゲートにたどり着かなければならないというラリー競技さながらに、ここまでも初めての試練の数々をこなしてきた。

 プロジェクトは最終ステージとも言える本番間近、彼らの言葉にこもる心意気、応援せずにはいられない。

12
すべて表示

 

 

 

 

 

 

ranking

RECOMMEND

MEDIA CONTENTS

WEB CONTENTS

 

 

 

 

 

 

MEDIA CONTENTS

WEB CONTENTS

ranking

AMW SPECIAL CONTENTS