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GT-Rの「プロ」が語る! 世界的に超絶人気とはいえバリバリ旧車の「R32GT-R」に長く乗る「秘訣」とは

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TEXT: 松本奈巳(GT-R Magazine)  PHOTO: 清水良太郎

プロショップの名チューナーが教える「オレ流」GT-Rの愛し方と付き合い方

 ショップデモカーとしてだけではなく、普段の愛車として「GT-R」と付き合う。長年パートナーとして向き合っていく中でわかったことや気を付けるべきこととは? 奈良県に店舗を構える老舗チューニングショップ『Kansaiサービス』の向井敏之代表が乗る1990年式R32型スカイラインGT-Rについて話をうかがった。

「GT-Rのプロ」だからこそ辿り着いた境地

 チューナーはGT-Rの酸いも甘いも噛み分ける存在である。極限までパワーを追い求めた経験も、新たなる展開を求めて悩み苦しんだこともあるはずだ。そうしてユーザーのお手本となるデモカーを作り出し、楽しいチューニングをわれわれに提供してくれる。しかし、デモカーはあくまでも「お店のクルマ」だ。記録に挑戦するために作られることもあるし、ストリート仕様といっても「自分の愛車」とはまた違う存在である。

 もちろん中には「大切な相棒」としてGT-Rに乗り続けるチューナーもいる。最も有名な一人が『Kansaiサービス』の向井敏之代表だろう。たびたびGT-R Magazineの誌面にも登場するシルバーのR32型スカイラインGT-Rは、向井代表が大切にする愛車である。プロが選ぶGT-R。どのように出会い、今まで付き合ってきたのか。メンテナンスを含め、名医が長く乗るために日頃気を付けていることを探れば、今後われわれが愛車とどのように向き合えばいいかのヒントが隠されているはずだ。

「このR32GT-Rは自分が死ぬまで乗り続けるつもりのクルマです」と言い切る向井代表。現在、走行8万㎞の1990年式である。元はデモカーで、平成15(2003)年に向井代表の下にやってきた。

「R32が発売された’89年に、デモカーとして2台購入しました。その後、さらに2台追加してテストや開発で走らせまくったのです。当時はサーキットはほとんど走らせず、最高速やゼロヨンが盛り上がっていた時代。それが落ち着いてきたときに、もう一度ストリートでちゃんと走れるクルマに戻そうよ、ということになりました」と当時を振り返る。

 パーツ開発もほぼ終了していたが、R32はずっと手元に置いておきたい。そこで自らの愛車としてドラッグ仕様の1台を作り直す決意を固めた。

「人生の最後まで、長く乗り続けようと思ったので、自分が一番好きなGT-Rを作るつもりでした。その答えがツインターボでレスポンス重視。パワーは500psもあれば十分だ、と’03年5月16日から作業を開始しました」。

 ここまで正確に年月を語れるのは、カルテがあるからにほかならない。Kansaiサービスを訪れるユーザーカー同様に、施された作業はすべてカルテに残されている。

「ターボ車のチューニングは圧縮比を落としてブーストを上げることが多いんです。そうするとパワーは出るけれど低速の2000~3000rpmのピックアップが落ちてしまいます。理想は高圧縮ターボ仕様でした」。

 中古のN1エンジンをベースに各部に加工を加える。通常のRB26DETTなら圧縮比は8.0程度。昔なら7.6くらいだったそうだ。しかしこのR32の圧縮比は9.0近くあると言う。燃焼室のインテーク側スキッシュエリアを広げてノッキングを抑え、高圧縮を実現。その分ブーストを落として使えば問題ないと考えた。ボアのクリアランスを狭めにしたのも長く乗るために考えたこと。シリンダーをボーリングして好きなクリアランスにしたかったので、HKSの鍛造ピストンを投入した。クランクメタルのクリアランスも狭めだが、長く乗るのだから十分慣らしをすればいいと考えたという。パワーではなく耐久性を重視した。

「R32は軽量ボディですし、高回転で伸びる気持ちよさが欲しかったので、ノーマル同様2.6Lのままです。高圧縮エンジンにしたのは排気量を上げずに下のレスポンスを出したかったから。これがR33やR34ならボディの重さを考えて2.8Lにしていたでしょうね。でも、乗っているうちに静かで燃費のいいRB26DETTが欲しくなりました。可変バルタイがあれば……。

 そこでHKSに提案したのが可変バルタイのVカム・システムです。このR32に装着されているVカムは試作品なのです。なんとかインテーク側を可変にしたいとHKSにいろいろ提案して開発していただきました。同様に理想のターボを求めて開発したのがKansaiサービスオリジナルのLCタービンです。純正よりもパワーを出したい。しかしN1タービンは下がない。低速は純正並みのレスポンスを目指して作りました」。

 ’03年にはエンジンと共にボディを作り直している。リフレッシュバーなどの剛性パーツを装着し、アーム類などを一新。ゼロヨン仕様でドンガラだった内装はダッシュボードを再度装着し、きれいに仕上げたという。だが、ボディをバラすなど大掛かりなことは考えていない。

「わたしにとってこのR32はかわいい彼女なんですよ。大事に使いたい。いつも素敵にしたい。かといって、100%の完璧を求めているわけではありません。ボディもあちこちヨレています。でも錆は少ないし、わたしもヨレてきているからいいんですよ。ギシギシ音もクルマの味です。じつは2~3年前からリヤデフがゴーゴーうるさいのですが、恐らくリングギヤが減っているのでしょう。懸念している部分ではありますが、次はLSDを交換して、塗装が剥がれかけているキャリパーもオーバーホールしたい。そのついでにゴールドに塗るのもいいな、と考えることが楽しいと思っています。足まわりの仕様変更なども考えていますよ。これらの作業はいずれ時間ができたときに、自分でやろうと思っています」。

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