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この見た目でミッドシップなんだぜ! 「ルノー 5ターボ」の異端児っぷりが半端ない

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田 了/

次の一手はFWDからミッドシップへのコンバート

 ルノーが考えた次の一手は、エンジンをミッドシップに搭載したラリーカーでした。ただし、当時のルノーのラインアップには、該当するようなミッドシップの市販モデルはありません。そこで新たなマシンを製作することになったのですが、それは皆が驚かされるようなプロジェクトです。

 そう、ルノー5をベースに、ミッドシップのスポーツカーを産み出そうというものだったのです。FWD車のパワーユニットをミッドシップに移設したスポーツカーは、1960年代のルネ・ボネ/マトラのジェットやロータスのヨーロッパでした。ロータス・ヨーロッパ

 1970年代に入ると大メーカーのフィアットがX1/9をリリースするなど、それまでにもいくつかの前例がありました。そこで生み出されていたのは流麗なボディを持った、ライトウエイト・スポーツカーでしたから、FWDの2ボックス3ドアハッチバックで、大衆車のルノー5をベースにしたルノー5ターボは、確かに異端児だったかもしれません。ルノー5ターボ

 それではルノー5ターボのメカニズムを少し紹介しておきましょう。ルノー5ターボに搭載されているエンジン/ミッション/デフはルノー5アルピーヌのものを使用していますが、これはエンジンの排気量が引き上げられてチューニングも施されています。元をただせばルノー4に搭載されていたものを、リヤからフロントに移植したものです。ルノー5ターボの透視図

 その際には前後方向をそのままに移植していましたが、ルノー5アルピーヌからルノー5ターボへのコンバートでは、フロントからリヤに移設すると同時に搭載方向を180度回転させてマウントしています。つまり、旧ルノー4のパワーユニットを、ボディ後方に180度回転させてマウントしていたことになります。ルノー5ターボ

 クルマの前から、エンジン、デフ、ミッションの順にマウントされていて、まさにF1マシンを筆頭とする純レーシングマシンのようなパッケージとなっているのです。

 またこうすることでリヤサスペンション用のスペースも増し、フロントだけでなくリヤにも設計の自由度が高いダブルウィッシュボーン式サスペンションが奢られることになりました。またエンジンをターボで武装しているのも大きな特徴です。ルノー5ターボ

 結果的に最高出力は市販モデルで165ps、WRCの実戦仕様では350psにまでパワーアップされていました。そしてラニョッティはルノー5ターボで1981年のモンテカルロと1982年のツール・ド・コルスを制し、さらに後継モデルとなったルノー5マキシ・ターボで1985年のツール・ド・コルスを制しています。ルノー5ターボマキシ

 ちなみに、ルノー5ターボと同様のコンセプトで1981年にはタルボ・ホライゾンが、1985年にはMGメトロが3/5ドアハッチバックのボディ後部にエンジンを搭載するミッドシップをWRCに向けて開発しています。残念ながら結果を残すことはできませんでした。タルボ・ホライゾン

 何よりも……ここからは個人的な意見になりますが、ルノー5ターボに備わっていた“チョロQ”的な可愛さは、唯一無二。前後のオーバーフェンダーも、いい意味での“ヤンチャ坊主”を演じる結果になっていたと思っています。

 じつはこのルノー5ターボを手本にしたのかはわかっていませんが、ホンダの初代シティをベースに、ミッドエンジンへのコンバートをトライしていたケースもいくつか取材した記憶はあるのですが、まだ資料や写真を整理できていないままです。こちらも発掘整理出来次第、ご紹介したいと思っています。

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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