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ロードスターの真骨頂「軽快さ」は「不安定さ」と表裏一体! 魔法の新技術「KPC」がネガを消した

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TEXT: 桂 伸一  PHOTO: 神村 聖/桂 伸一/マツダ

  • 2015年にND型へとフルモデルチェンジしたロードスター
  • コーナリング中に内外輪の回転差を検知するとKPCが作動
  • ロードスターの独特の姿勢変化を使いこなしてのコーナリングは奥深い世界
  • ESCのオンオフでKPCのオンオフも切り替えられる
  • 「S」をベースにバネ下重量をさらに数kg軽量化した「990S」
  • ネイビーブルーのソフトトップが外観上の大きな特徴
  • RAYZ製アルミ鍛造ホイールとブレンボ製ブレーキを装着
  • シンプル極まるコックピットにはブルーのアクセント
  • 高速域でのヒラヒラ感は楽しい反面、大きすぎる場面もある
  • ロードスターRFにも当然KPCが採用される
  • ロードスターのアンチリフト・ジオメトリー
  • 筆者は2002年にRX-7でニュル24時間に参戦した
  • ドイツでの移動の足はアテンザとNBロードスターだった

サーキットのような高速域でとくに効果を発揮

 マツダは現行ND型ロードスターの最軽量グレード「990S」をデビューされると同時に、新たな車両姿勢安定化制御技術「KPC」を発表し、今後ロードスター全車に採用する。「人馬一体」の走りをさらに高めるというKPCによって、ロードスターの走りがどう進化したのか? ニュルブルクリンク24時間レースを走った経験ももつガチ走り系モータージャーナリスト、桂 伸一氏のレポートをお届けしよう。

30年以上にわたり愛されるライトウェイトスポーツカー

 ヒラヒラと舞うように走る。ライトウェイトスポーツを日本はもとより世界にふたたび知らしめた「ロードスター」は、いつ乗ってもロードスターらしい操縦性で迎えてくれる。

 現行モデルはすでにデビューから7年も経つのに、走り出してコーナーをひとつ曲がった瞬間から「ああ、これこれ」。動きのすべてが軽快で速い、これぞロードスターと思わせる操縦性にほほが緩む。

 年に一度マツダが主催する「メディア対抗ロードスター4時間耐久レース」というイベントがある。われらジャーナリストと自動車媒体20数社がチームを組み、ロードスターの操縦特性すべてを引出して真剣勝負でレースする。その愉しさに参加者全員がどっぷりとはまっている。

 そこでロードスターの極限での動きを味わい、コントロールする技を鍛えられたりもする。現状コロナ禍で昨年のイベントは延期となったが、1989年の第1回大会より30年以上続く、一モデルのワンメイクスレースとしては日本、いや世界的にも最長寿のレースだ。

2015年にND型へとフルモデルチェンジしたロードスター

ロードスターならではの「ヒラヒラ感」にはネガもある

「人馬一体」という初代のコンセプトを継承し続けて第4世代まで来たロードスターは、欧州のように高速域が続くシーンでは、そのヒラヒラと身を翻す動きにファンは魅了されるが、反面その動きが大き過ぎる場面もある。それはロードスター乗りであれば薄々か、重々か程度の差はあれ感じているところではある。

 走行中のフラットな姿勢からブレーキ操作、ステア操作で曲がり、アクセル操作で加速していく。それぞれの操作が加わると、スッと素早く姿勢が変わることこそがロードスターの持ち味。だが、欧州でもとくにドイツでは、アウトバーンやカントリーロードの絶対速度が高いため、日本では想像できない動きも起こる。高速域の高G領域では姿勢変化が大きく「不安定」と指摘されるのは、そんな状況下だからである。

 それは初代から続いているロードスターの特性であり良さであり、らしさである。それを含めても、メーカーは万人の声に応えなければならない難しい立場になる。

高速域でのヒラヒラ感は楽しい反面、大きすぎる場面もある

「アンチリフトジオメトリー」を活かした新制御

 現行モデルの開発陣は、ロードスターらしさを変えず、失わずに、どうすればそのネガを抑えられるかに向き合った。それも新たなパーツで武装したのでは重量増を招き、ロードスターの魅力を曇らせてしまう。

「KPC(キネマティック・ポスチャー・コントロール)」は今回ロードスター全モデルに加えられた、キモの制御だ。要約すると「運動学に基づいた車体姿勢の制御技術」となる。

 後輪左右の回転差を検知して、内輪のブレーキを微少に制御することで姿勢抑制に効果のある極めてシンプルな機構であり、重量増には一切つながらない追加機能として、数年前から暖めてきた「隠し球」である。

 元来ロードスターのリヤサスペンションは、減速や減速しながらの旋回で起こる「アンチリフト」=リヤサスが伸び上がることでボディの浮き上がりを抑えるジオメトリーになっている。

ロードスターのアンチリフト・ジオメトリー

 しかし、それでも高い速度域ではカバーしきれない部分もある。先の車速の高いドイツの例や、国内でも速度域の高いサーキット走行で、確かにステア操作からボディのロール、浮き上がりを不安定と感じる姿勢変化になることがある。

 いわば、その姿勢変化こそロードスターらしさで、腕自慢はその変化を使い、少ないステアリングの切り角と最小限の修整舵=カウンターステアとアクセル操作で、高い旋回速度を維持したままコーナーを駆け抜ける。これができれば、貴方はプロになれる!

ロードスターの独特の姿勢変化を使いこなしてのコーナリングは奥深い世界

旋回中のボディの「浮き上がり」を抑える

 ブレーキングしながら大舵角を与えてヘアピンコーナーに進入して行く際の姿勢変化、ロールからリヤタイヤ内輪の接地力が弱まり外輪との回転差が起ると、KPCの制御は内輪側にごく弱いブレーキ圧を加える。アンチリフトジオメトリーはそのわずかなブレーキ力でボディの浮き上がりを抑制するため、ドライバーはロールが抑えられて安定していると感じるハズ。

コーナリング中に内外輪の回転差を検知するとKPCが作動

 こう言うと錯覚しがちだが、あくまでもボディの浮き上がりを抑える機能であって、内輪の荷重が増える、つまりタイヤの接地圧が高まるワケではない。

 とはいえESCのON/OFFに連動するKPCのON/OFFを切り替えると、姿勢変化を抑えることはクルマの挙動変化に大きく関わるのだと、ダイレクトに感じ取れる。いまの自分の操縦方法が適切に行われているか否かを見直すための大きなヒントでもある。

 ステアリングの操作ひとつで姿勢も挙動も瞬時に変わるロードスターだ。元来、その際に生じる姿勢変化を抑えるためのサスペンションジオメトリーだからこそ活きたKPC制御は、「重箱の隅を突つくほど緻密」な制御にこだわるマツダらしい仕事のひとつだ。

ESCのオンオフでKPCのオンオフも切り替えられる

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