三菱の「サターン(土星)」エンジンって? 「オリオン」や「ネプチューン」のネーミングは戦闘機エンジン「金星」「火星」にルーツがありました (1/2ページ)

三菱の「サターン(土星)」エンジンって? 「オリオン」や「ネプチューン」のネーミングは戦闘機エンジン「金星」「火星」にルーツがありました

WRCで三菱に初の総合優勝をもたらしたエンジン

 三菱自動車工業は、川崎重工業、石川島播磨重工業(現IHI)とともに日本の三大重工業とされる三菱重工業から分社独立した自動車メーカーですが、まだ独立前、三菱重工業の一部門だったころから“エンジンの三菱”を標榜していました。そして独立直前に登場したサターンエンジンは、今なお名機の誉れ高いエンジンです。

エンジンの三菱が送り出した天体関連の愛称を与えられたサターンエンジン

 三菱自動車工業の母体である三菱重工業は、戦後GHQによって東日本重工業(のちに三菱日本重工)と中日本重工業(のちに新三菱重工業)、西日本重工業(のちに三菱造船)に分割されていましたが、1964年に3社がふたたび統合されて現在の三菱重工業が誕生しています。

 そのような歴史もあり、3社に分割されていた時代も含めて、三菱重工業時代には工場を示すアルファベット、例えば水島工場で製作されたエンジンには“M”のイニシャルで始まるエンジン形式が採用されていました。しかし1965年に登場したコルト800用の3G8型以降は、現在の命名法が採用されています。

 まず最初に気筒数を示す一桁の数字があり、続いてはガソリン・エンジンだったら“G”、ディーゼル・エンジンならば“D”という風に燃料の種別を示すアルファベット。さらにエンジンの系列を示す一桁の数字と、その系列の中で特定のエンジンを示す一桁の数字を用い、これらを繋げた4桁の英数字で表されることになります。

 ところで、そうした命名基準とは別に愛称が与えられたエンジンもあります。戦時中に三菱重工業が製作していた戦闘機用エンジンにも「金星」や「火星」といった惑星名を愛称とするエンジンがありました。

 それにちなんで2G2系で軽自動車用の2気筒ガソリンエンジンを「バルカン=かつて太陽系において水星の内側を周回していたとされた仮説上の惑星」、4G1系で小型車用1.2~1.6Lの4気筒ガソリンエンジンを「オリオン=ベテルギウスやリゲルなどで構成される冬の星座」などと名付けています。ほかにも4G3系を「サターン」、4G4系を「ネプチューン」、4G5系を「アストロン」、4G6系を「シリウス」などと呼んでいました。

 今回の主人公、サターンエンジンは小型車用で1.2~1.8Lの直列4気筒=4G3系と、2L直列6気筒=6G3系からなり、6G3系はとくにサターン6と呼ぶことがあります。上記の星座に関した愛称を持つエンジン群のなかで最初に登場し、三菱では初のSOHCヘッドを持ったエンジンでした。

 ちなみにサターンは土星を表しています。サターンエンジンが最初に採用されたのは、1969年の12月に登場したコルト・ギャラン。1300のAIシリーズには排気量1289cc(ボア×ストローク=73.0mmφ×77.0mm。最高出力は87ps)の4G30が、1500のAIIシリーズには排気量1499cc(ボア×ストローク=74.5mmφ×86.0mm。最高出力は95ps)の4G31が搭載されていました。

【関連記事】昭和名車の合体「ハコトラ」復活! 「ハコスカ」顔の「サニトラ」のエンジンは伝説のチューナーが手掛けていました

三菱車に搭載されていたサターンエンジンを振り返る画像はこちら

 翌1970年の5月にはハイパフォーマンスモデルのコルト・ギャランGSがデビューします。1.5Lの4G31エンジンはツインキャブでチューニングが施され、最高出力は105psにパワーアップ。さらに1970年の10月にはギャランGTOが登場しますが、こちらに搭載されていたのは1.6Lの4G32で、1597cc(ボア×ストローク=76.9mmφ×86.0mm)の排気量からシングルキャブ仕様で100ps、ツインキャブ仕様では110psを絞り出していました。

 そしてさらに2カ月後の1970年12月には、4G32エンジンの真打ともいうべきツインカム仕様が登場します。ギャランGTOシリーズのトップモデル、GTO MRの専用エンジンとしてのデビューとなりました。こちらはシングルカム仕様と同じ1597ccの排気量から125psのハイパワーを絞り出しており、同年にトヨタが発売した初代セリカのテンロク・ツインカム、115psを発する2T-Gよりも10psも高出力でクラス最高を謳っていました。