3億3000万円の落札価格は、むしろリーズナブル?
このフェラーリ・プロトティーポは、社内では「275GTB/4」として分類されていたが、デイトナの試作モデルであることはボディデザインを見れば明らかであるだけでなく、完成後すぐに購入したルイジ・キネッティ・モーターズの資料でも明らかにされている。
マッジーニによると、ルイジ・キネッティはこの個体を「275GTB/4」ないしは「デイトナ」の2つの名前で呼んでいたとのこと。つまり、パリ・サロンに登場する少なくとも半年前から、このペットネームで呼ばれていたことがわかる。
365GTB/4の市販がスタートし、試作車としての役目を終えた「#11929」は、世界最大規模のフェラーリ・ディーラーだったキネッティを介して、1969年にコネチカット州在住のファーストオーナーに売却された。しかし最初のオーナーは、短期間このクルマを所有しただけでキネッティに返却。そこでキネッティは1970年4月に「ニューヨーク・オートショー」に出展し、その後ニューヨーク州在住の2代目オーナーに譲渡した。
その際この個体には、のちに有名となる「GTB 4」のニューヨーク・ナンバーが付けられ、以降17年間にわたってニューヨーク州で過ごすが、1992年にスイスのフェラーリ愛好家に譲渡。ヨーロッパ各地のイベントに姿を見せている。

1996年には再びアメリカに戻り、同年8月の「モントレー・ヒストリック・レース」に展示。さらに翌年には「メドウブルック・コンクール・デレガンス」にも出品された。
そして1997年末、このデイトナ・プロトティーポは、歴史的に重要なスポーツカーの素晴らしいコレクションを所有する現オーナーが入手する。
アメリカの専門誌「Forza」2006年6月号にこのデイトナ・ポルトティーポの試乗記を寄稿した著名なモータースポーツ作家、ウィンストン・グッドフェロー氏は、軽量化された3.3Lエンジンが標準のデイトナよりも軽快であると述べるとともに、特にこの個体のギアボックスを絶賛している。
「アクセルを踏み込むと、V型12気筒エンジンが、デイトナでは考えられないような激しい吸気音を立てて空気を吸い込む。250、275、330に見られるカムとタペット、バルブ、チェーンが織りなす美しくも複雑な高音のシンフォニーは365にはないもので、そのおかげでドライビング体験はより素晴らしいものとなっている」
275GTB/4と365GTB/4のデザイン要素をブレンドしたこのベルリネッタは、コンクール・デレガンスやフェラーリ・クラブのミーティングで大きな賞賛を浴びるような、希少な特徴を帯びている。
今回の販売に先立って「フェラーリ・クラシケ」の認定を取得しており、レッドブックはフェラーリ本社から次のオーナーに提供される予定となっている。フェラーリの歴史に残るこのワンオフ車両は、フェラーリファンだけでなく、すべての自動車愛好家にとっても、デイトナという偉大なモデルの開発過程を視覚的に説明する貴重な資料なのだ。
市販型デイトナのおよそ3倍のプライス
欧米のみならず、日本においても「スーパーCG」誌の定期刊行最終号となった35号で特集が組まれて表紙まで飾るなど、全世界で認知されている有名なプロトティーポについて、RMサザビーズ北米本社は225万ドル~300万ドルという、市販型デイトナの市場相場の3倍近くにおよぶエスティメート(予想落札価格)を設定。
そして、実際に行われた競売では231万5000ドル、日本円に換算すると約3億3040万円という価格で無事落札となった。
3億3000万円超えという価格自体は驚異的なものではあるものの、こののち「ペブルビーチ」や「ヴィラ・デステ」、あるいは英国ハンプトンコート宮殿の「コンクール・オブ・エレガンス」に代表される一流コンクール・デレガンスで「スター」となり得る資質を思えば、むしろリーズナブルにも感じられてしまったのである。




























































