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日産新型「エクストレイル」に1200km試乗! 「第2世代e-POWER」の肝は可変圧縮比エンジンにありました

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TEXT: 斎藤慎輔  PHOTO: 神村 聖

自然で好ましい加減速は日産の面目躍如

 日産がEVの「リーフ」で長く培ってきた電動駆動技術は伊達ではなく、アクセルワークに対して力強い加速を備えつつ、それでいて唐突さは感じさせないような上質な発進、加速制御を行うことができる。

 エクストレイルはハイブリッドだが、完全な電動駆動という点では同じ。この場合、往々にして難しいのは、モーターはごく低速域から高いトルクを発生し、その領域でのレスポンスが高いこともあり、ほぼ一定速で走らせたい時や、いわゆる巡航時などにごく微小なトルク変動を生じて、ドライバーの意図していない不自然な前後Gの揺動感を生じたりするものもあるが、エクストレイルではそうした心地よさを阻害する要素も感知させることがなかった。

 もっとも、ドライブモードによって走り感もドライバビリティもけっこう変わる。燃費を意識してエコモードを選択すると、アクセルワークに対する出力(加速)は、アクセルペダル踏力が重くなることもあって、感覚的にはパワーがガッツリ抑制された印象だ。

 同時に減速回生ブレーキも強めで、この場合、アクセルペダルからほんの少し足を戻しただけでも、ブレーキランプ点灯要件であるマイナス0.07Gを越える減速力を発生させる。これを後続車から見ると、前のクルマがやたらとブレーキを踏んだり戻したりしているようにも錯覚させがちなのが気になる点。

 ちなみに、e-POWERお得意の「e-Pedal」をオンの際には、ドライブモードに関係なく、より強力な減速回生制御となる。たしかにフットブレーキ操作を大幅に減らすことは可能なので、これを便利だと思われる方も多いとは思う。一方で、今後、ブレーキランプ点灯要件の法規に関する再検討は必要だろう。

 なお、新型エクストレイルではブレーキランプの点灯状況が、メーターパネル内の自身の車両を描いたグラフィックで視認できる。

 といったことから、「AUTO」モードのままe-Pedalはオフで走るのが、一番自然で好ましかった。加速、減速ともにスムースで、登坂や高速域でも必要とした際のパワーも、状況に応じて十分に発生させてくれる。

緻密な駆動制御でとても素直に曲がる感覚

 加えて、操縦安定性においてはe-4ORCEが強い味方となり、先代に比べても圧倒的に洗練された感が得られた。ちなみにプラットフォームは先代エクストレイル同様、日産・ルノー・三菱アライアンスによる「CMF-C/D」を採用。これは三菱では新型「アウトランダー」に、ルノーでは「メガーヌ」や「カジャー」など、多車種ですでに採用されてきたものだ。

 まず、ステアリングの操舵感がなめらかで切り始めからの応答感が自然なこと。そのうえで、e-4ORCEによる前後駆動力配分と左右の駆動力およびブレーキ制御により、簡単に表現するなら、とても素直に曲がる感覚。

 基本的な駆動力制御としては、舗装路など路面のミューの安定した状況での直進時は、ほぼ前輪だけで駆動させている。コーナーではステアリングの切り始めに、後輪側の駆動力を増加させて、後ろ側から押す感じで曲がりやすくする。さらにコーナーに対して外輪側の駆動力を増加させ、内輪側にはブレーキを軽くかけることで、内側へのモーメントを発生させる。

 路面状況、速度とドライバーの操作に応じてこうした4輪の駆動制御を緻密に行うことで、目標とするラインに安定性を保ちながら導けるようにしている。

 街角で曲がる際などでは、後ろから押されるようにスーと曲がる感覚が生じたりもするが、これがワインディングなどでは、高い安定感を保ったままに気持ちよく曲がる。ただし、コーナーの途中でアクセルを戻した際などには、通常は前輪に荷重が移ることでノーズがインに入っていく動きを伴うのとは異なり、安定性を重視しているため本来の旋回軌道を保とうとする。ステアリングを切り足せばこと済む話だが、ドライバーによっては、自分の意図と違うと感じるかもしれない。

 こうした動きからも、自然な旋回性能と同時に、高い安定性を得ることを目標とした制御をしているのが分かるのだった。

タイヤ選択はバランスを取るか上質感を取るか

 乗り心地も、ピッチングが抑えられたフラットな動きでおおむね快適だが、最上級グレードである「G e-4ORCE」に装着されていたタイヤ、19インチのハンコックVENTUS S1 EVO3 SUVの235/55R19 101Vは、少し強めのハーシュネスを伝えがちなところがあった。

 というのも、「オーテック」には20インチ専用アルミホイールとともに、タイヤはミシュランPRIMACY4の255/45R20 101Vが与えられていたが、こちらのほうが路面からの当たり感が優しく、さらにロードノイズも低めで、快適性の印象はより良くなるからだ。

 このあたりタフギアとしての全体バランスを重視するか、見た目も含めてだが、走りの上質感をより重視するか、の選択だろう。

実燃費は街乗り15.6km/L、高速主体で14.4km/L

 最後に、セルフスタンドで給油口ギリギリまでの給油を数回行った満タン法での平均実燃費を報告しておくと、「G e-4ORCE」で都内および近郊主体を4日間、短距離走行を繰り返した際で15.6km/L、「オーテックe-4ORCEアドバンスドパッケージ」で連休中の大渋滞を伴う高速道路や平均車速の高い地方バイパス等での移動を主とした数日間で約1100kmの走行において、3度給油した際の実平均燃費は14.4km/Lだった。

 いずれの給油の際もメーター上の平均燃費は、給油による実燃費より5~7%良い数値が表示されていたのはご愛嬌。ちなみに、そのメーターによる区間平均燃費での最高値も17.6km/Lに留まった。

 この数値から見る限り、VCターボエンジンの採用で動力性能には余裕は得られた一方で、速度域が高まるにつれて燃費には辛くなるシリーズハイブリッドの特性までは、克服できたは言えないかもしれない。

 とはいえ、ゆったりとしたスペースに高い使い勝手を備えた後席や荷室などとともに、走りに上質感を加えた「タフギア」として、新型エクストレイルの魅力は十分に高い。あとはe-4ORCEのさらなる能力、実力を知るべく雪道や氷結路でもぜひ試してみたいものだ。

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