右ハンドル仕様は69台のみ
いっぽう今回の「LONDON」オークションに出品された、もう1台のジャガーXJ220は、冒頭で述べたとおり281台が作られたスタンダード版の1台。「スパ・シルバー」のボディに「スモークグレー」の本革レザーインテリアという、XJ220としては最も人気の高い組み合わせで、1993年5月4日にジャガー・スポーツ社のブロクサム工房から送り出されたと伝えられている。
この個体は、右ハンドルで製作されたわずか69台のXJ220のひとつであり、完成から2カ月後に英国所在の初代オーナーに納入されて以来ずっと英国内で生息し、複数のエンスージアストのもとを渡り歩いてきた。しかし、どのオーナーも英国の名だたるジャガー・スペシャリスト、あるいはXJ220スペシャリストで、ともにメンテナンスを欠かさず、2022年6月に行われた点検サービスに至るまで、エンジンを含むコンポーネントの摩耗の兆候はすべて最小限を示しているという。
そしてもう1台、オレンジ色のXJ220Sは1993年4月21日に完成し、1998年2月にベルギーのコレクターに売却されるまで、TWRによって保持されていたと考えられている。1999年11月に米国へと輸出され、西海岸を拠点とする3名のオーナーのもとで保有。2015年の「ザ・クウェイル:モータースポーツギャザリング」にも出品されている。
今回RMサザビーズ「LONDON」オークションに出品されたXJ220とXJ220Sは、「グランツーリスモ・コレクション」の名のもと、フェラーリのスペチアーレ各モデルや1980年代のグループBラリーマシンなどを保有しているプライベートコレクターから出品されたもの。XJ220Sは2018年からグランツーリスモ・コレクションに加入。カタログ作成時の走行距離計は、わずか4822kmを記していたとのことである。
世界で5台のXJ220Sは、1億6700万円のプライス
今回のオークションにあたり、グランツーリスモ・コレクションとRMサザビーズ欧州本社は、スタンダード版XJ220に37万5000~42万5000ポンド、つまり邦貨換算約6300万~7140万円というエスティメート(推定落札価格)を設定したが、残念ながら出品者側の希望したリザーヴ(最低落札価格)には届かなかったようで、現時点では継続販売となっている。
しかしその傍ら、85万~110万ポンドでエスティメートを設定したXJ220Sは、RMサザビーズ側の思惑どおりにビッド(入札)が進み、終わってみれば93万3125ポンド、日本円に換算すれば約1億6700万円で落札されることになった。
やはりホモロゲートモデルの「神通力」は、たとえジャガーXJ220のようなハイパーカー級モデルがベースであっても、明確な価格差として現れるのかもしれない。