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ポルシェの悲願だったル・マン初制覇!「917」は伝説の王者でした

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田 了

またしてもレギュレーションが変更され、ル・マン制覇に真打たる917が登場

予選で速さを見せたものの、決勝ではトラブルに足をすくわれたポルシェでしたが、1969年シーズンを前にまたしてもレギュレーションが変更されることになりました。今度はエンジン排気量が3L以下に制限されたスポーツ・プロトタイプに対して、エンジン排気量が5Lまで許されたスポーツカーの生産台数が連続する12カ月間に25台以上、と半減されたのです。

これでポルシェは、前年に引き続いて国際メーカー選手権を3Lのフラット8を搭載した908で戦いながら、ル・マン24時間レースに向けては5Lエンジンを搭載したスポーツカーの917を製作することになりました。その戦績を振り返る前に、まずは917のメカニズムについて紹介しておきましょう。

ポルシェのレーシングカーとしては伝統となってきた鋼管スペースフレームにグラスファイバー(FRP)で成形された、40kgにも満たない軽量なカウルをまとっていました。搭載されたエンジンの排気量は規定一杯の5Lではなく、一見中途半端に思える4.5Lでしたが、これは908に搭載されていたフラット8をベースに4気筒を追加して誕生させたフラット12だったからです。

6気筒ずつを対向させたフラット12とするとクランクシャフトが長くなりたわむことが懸念されることから、フラット6を前後2基連結させる格好で間に挟んだフライホイールの下方に出力シャフトを置くレイアウトを採用。軽く仕上がると同時に、完成後はいきなり542psを発揮する……本番用では580psをあっさりと捻り出すほどパフォーマンスも優れていました。

ポルシェ917のエンジン

デビュー2シーズン目で見事な活躍を披露

デビュー戦に予定されていたスパ1000kmに持ち込まれた917ですが、この時点では熟成不足が明らかで、決勝レースではTカーの908を使用することに。その翌戦、ニュルブルクリンク1000kmが917のデビュー戦となりました。しかしここでも熟成不足は隠し切れません。

908がトップ5を独占してポルシェは見事タイトルを手に入れることになりましたが、肝心の917は8位でチェッカーを受けるのがやっとでした。しかし彼らが目標としていたル・マンでは見事な速さを見せつけます。公式予選ではロルフ・シュトムレンが、前年のポールタイムを12秒以上も短縮する驚異的なタイムをマーク。もう1台のワークス917がこれに続きました。

しかし信頼性を確保するにはまだまだ準備不足だったようで、シュトムレンの917はスタートから1時間経過したところでクラッチトラブルにより後退。残り4時間まで快走を続けていたヴィック・エルフォード組の917もギアボックス/クラッチ系のトラブルで息を止めることになりました。そしてシリーズ最終戦となったオステルライヒリンク1000kmでようやく本領発揮し、シフェール組が嬉しい初優勝を飾ることになったのです。

デビュー2シーズン目となった1970年の917は、もう見事としか言いようのない活躍を見せつけています。シリーズ第2戦のセブリング12時間でフェラーリに先んじられてクラス2位に終わったものの、それ以外は開幕戦のデイトナ24時間から最終戦(第10戦)のオステルライヒリンク1000kmまで10戦9勝。

第5戦のタルガフローリオと第7戦のニュルブルクリンクの2戦は、こうしたコースではより競争力が高くなる908/03に任せて欠場していますが、いずれも顔を見せたレースでは横綱相撲。悲願だったル・マン初制覇も果たしています。そして翌1971年のル・マン24時間でも連覇を果たし、917は伝説の王者となっていったのです。

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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