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フェラーリ「納屋物件」VS「改造車」を制するのは?「512BB」はやっぱり憧れのザ・スーパーカーでした

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2023 Courtesy of RM Sotheby's

オーナー好みにドレスアップされた512BB

いっぽう「ロッソ・キアーロ(明るい赤)」単色にペイントされたほうの512BBは、1979年に製作されたシャシーナンバー#27117。コネチカット州グリニッジのレジェンド的ディーラー、ルイジ・キネッティの仲介により、のちに生涯を通じて所有することになるファーストオーナーの手に渡った。

フェラーリ512BB

後継の512BBiではデフォルトとなる単色のボディカラーは、512BB時代では少数派。しかし、北米フェラーリ界では権威として知られていた初代オーナーは、購入後も工場出荷時のロッソ・キアーロの外装色を維持していた。ただ、1985年ごろにカリフォルニア州のインテリア専門業者に依頼し、赤く染めたヘッドライナー、赤いカーペット、赤いドアパネル、黒いレザーシートに赤いパイピングを組み合わせるなどのドレスアップを施している。

またMOMO社製「プロトティーポ」ステアリングホイールと、純正エアクリーナーの代わりにウェーバー製キャブレターの上に設置された12連のエアファンネルが、ル・マンなどのモータースポーツにインスパイアされたレーシーな雰囲気を獲得しているものの、根本的に改造車であることに変わりはない。

初代オーナーは2021年に没するまで512BBを所有し続け、その直後に、2代目オーナーの所有する大規模なコレクションにくわえられた。そして歴代でただ2名のオーナーは、ともにこの512BBをとても大切に扱ってきたようだ。日常的なメンテナンスを受けていたのは当然ながら、2013年から2014年にかけて発行された請求書によると、燃料系統と冷却系統の整備、エンジンを降ろした大規模サービス、キャブレターのクリーニングと調整が行われている。

また2022年10月には、再びエンジンを降ろして整備。この時に定番のタイミングベルトやシール、ガスケットの交換のほか、ウォーターポンプ、クラッチスリーブシリンダー、スロットルケーブルなどの補助部品が、必要に応じてリビルトまたは交換されたという。

レストアベースでも改造車でも、V12フェラーリの威光は健在か?

そして注目の落札結果だが、「Lost & Found Collection」から出品された赤/黒の1980年型512 BBは、10万ドル~20万ドルに設定されたエスティメート(推定落札価格)に対して15万1200ドル。日本円に換算すると約2200万円で小槌が落とされた。そのかたわら、ロッソ・キアーロ単色の1979年型512BBは、25万ドル~30万ドルというエスティメートに一歩届かない24万800ドル。つまり、約3520万円での落札となった。

オリジナリティの高さがマーケット価格に直結する現在のクラシックカー界において、たとえば「フェラーリ・クラシケ」を取得するには妨げとなるような改造が施された後者の評価が、いささか低めとなるのはやむを得ない。

いっぽう、いくらオリジナリティが高いとはいえ、やはりレストアには相当な期間と費用を要するバーンファインド車両もまた、低めの評価を受けるのも然りである。

それでも約2200万円と約3520万円という落札価格がつくのは、やはり12気筒のクラシックフェラーリの威光が薄れていないことを証明している……、とも考えられるのだ。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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