最高速度は324キロを記録
これぞいかにもスーパーカーのそれだと誰もが感じるボディデザインは、あたかも空気の壁を切り裂くかのような鋭さを持つが、これは当時ピニンファリーナのチーフスタイリストであった、レオナルド・フィオラバンティの手によるものとされる。
究極の機能美、F40のスタイリングを表すにはこのような言葉が最適だろう。そしてさらに驚かされるのは、このボディに使用される軽量素材の数々。カーボンやケブラーを筆頭に、パート別に効果的に使い分けられた素材は、いずれも軽量でそして強靭な特性を持つ。結果288GTOと比較すると、F40はそれよりも60kgも軽量な1100kgの車重を実現しているのだ。
F40の心臓部ともいえるパワーユニットは、3LのV型8気筒ツインターボ。これには最大過給圧で1.1バールが設定されたIHI製のターボチャージャーがツインで装着され、最高出力では478psを発揮した。組み合わせられるトランスミッションは5速MT。ディファレンシャルは40%のロッキングファクターが設定されたLSDで、ファイナルは2.73と最高速をかなり強く意識した設定となっている。じっさいにフェラーリがF40で発表した最高速は324km/h。その数字には圧倒的なバリューがあった。
1988年になって生産が開始されたF40は、当初400台ほどの限定車とされる予定だったが、その人気は予想をはるかに超え、結果的に1992年まで1311台が生産された(諸説あり)。
ピュアな前期型、落札価格は……?
今回紹介した1989年式は、F40としてはかなり早い段階で生産されたヨーロッパ仕様で、しがたってキャタライザーや、1991年から標準装備されることになった、車高をミニマム/ミディアム/マキシマムの3段階に切り替える車高調節機能も装備されていない(フェラーリは1991年前期型以前のモデルにも、そのオプション装着を可能としていたのだが)。ある意味最もピュアな、前期型F40の姿がここにあるといってもよいだろう。
「83052」のシャシーナンバーを持つこのF40は、1989年10月25日に、マラネロ工場からモデネーゼ・フェラーリ・エージェントモーター社へと出荷され、その後フランスに渡った。さらにイギリスで登録された「83052」は、フェラーリのエキスパート、DKエンジニアリング社を通じて、イギリスのジョンソン氏に売却。2001年6月にはロンドンのボンド・ストリートで開催された権威あるフェラーリ・オーナーズ・クラブ・コンクール・デレガンスにも招待されている。氏はフェラーリが推奨する5000kmごとの整備スケジュールに従い、DKエンジニアリングでメンテナンスを欠かすことはなかったという。
2016年にはフェラーリクラシケの認定も得た、由緒正しき1988年式F40。注目の落札価格は197万3750ポンド(邦貨換算約3億7983万円)という数字で落ち着いた。これからも、もちろんその価値が下がることはないだろう。























































































