馴染めば当たり前のように走らせられるチンクエチェント
名古屋の「チンクエチェント博物館」が所有するターコイズブルーのフィアット「500L」(1970年式)を、自動車ライターの嶋田智之氏が日々のアシとして長期レポートする「週刊チンクエチェント」。第52回は「チンクエチェントの運転ってむずかしいの?」をお届けします。
週刊チンクエチェントに美女が登場! その理由は……
煌びやかな街の夕暮れの灯りの中に、ぼんやりと浮かび上がるチンクエチェント。そして、かたわらに寄り添うようにして佇む、ひとりの女性の存在。この『週刊チンクエチェント』を以前からご覧になってる方は、えーっ! マジか⁉︎ と驚かれるかもしれない。あるいは、コイツ見栄を張って仕込みやがったな、なんて思われたかもしれない。だって、こういう感じで女性が登場したことなんて、これまでただの一度すらもなかった、男くさいというかオヤジくさいというか軽くオタクっぽいというか、とにかく女性の薫りの見えない色気ゼロの連載なのだから。まぁ私生活もそうなんだけど。……ちっ。
いや、でもまぁ驚くようなことでもなければ仕込みを入れたわけでもない。僕にだって美女の知り合いくらいはいる。彼女はYUちゃんこと柳原ゆうちゃん。だいぶ歳は離れてるのだけど、仕事仲間なのだ。
YUちゃんがどんなことをしてる人かといえば、最初に記すべき肩書きは、やっぱり“モデル”だろう。以前はスーパーGTのGT500クラス強豪チームのレースアンバサダーや海外モーターサイクル・メーカーのイメージガールなどをつとめていたりもした。
が、僕がモデルさんとしてのYUちゃんよりよく知ってるのは、ちょっと驚いちゃうくらいのバイク好き、クルマ好きとしてのYUちゃんの姿だ。愛車はおそらく日本で最も有名なヤマハSR500、タイプ916の2001年式アルファ ロメオ「スパイダー」、そして1975年式シトロエン「アミ8」。しかもフツーに「キャブが」とか「オルタ(ネーター)が」とか「今日は(幌の)調子が悪い」みたいな言葉がスルッと出てくるって、なかなかないでしょ? どんだけ好きなんだ? って感じ。
で、それだからして……のふたつめの肩書きは、YouTubeで結構なアクセス数を誇る動画クリエーター。YUちゃんのチャンネル『YU.SR500 / 愛車のある暮らし』はほとんどがバイク関連とクルマ関連の動画で、モノによっては173万回再生とか94万回再生とかの数字を叩き出してたりする。……すごい。マジですごい。いうまでもなくそれは中身がしっかり伴ってるからで……いやいや、僕が四の五のゴタクを述べるより見てもらう方が早いな。YUちゃんの世界観、とくと御覧あれ。
動画以外にもいろいろクリエーションしていて、それはこっちを見てもらうのがいいだろう。
そしてさらにさらに! バイク好きのクルマ好きが高じまくって到達したのは、みっつめの肩書き。ガレージ・プロデューサー。自分のガレージを設計して作り上げたと思ったら、ふと気づけば『Casa Garage(カーサ・ガラージュ)』という屋号でガレージの総合プロデュースをする“株式会社 愛車のある暮らし”を設立して、ガレージ付き住宅やガレージのリノベーション、賃貸ガレージハウスの物件紹介などを展開する仕事までクリエーションしちゃってた。まぁちょっと下のサイトを見てみてちょーだい。
著者以外で初めてゴブジ号のステアリングを握ったのはYUさんだった
いやいや、どうしてこんな感じでYUちゃんを紹介させてもらってるのかというと、実は2022年の1月13日、ゴブジ号に乗ってもらってるのだ。チンクエチェント博物館の伊藤代表、深津館長、修理やメンテナンスをしてもらったチンクエチェントのエキスパートたち、そして僕以外で、初めてゴブジ号のステアリングを握った記念すべき人物がこのYUちゃんだった、というわけだ。
当時のYUちゃんは“バイク好きモデル”“クルマ好きモデル”として知られた存在で、動画クリエーターとしても活躍しはじめていたけれど、愛車はSR500とアルファ スパイダーの2台体制で、まだアミ8を手に入れるちょっと前。実はクラシック・チンクエチェントを愛車にすることはできないかと真剣に考えていた──たしか“ファミリーカーにすることを前提にしたいって考えてる”というナカナカなことを言ってた記憶があったりする──タイミングだった。ほぼ時を同じくして、チンクエチェント博物館のYouTubeにも出演することになり、ここまで古いクルマにはほとんど乗ったことはないし、ダブルクラッチっていうのもしたことないし、でも引き受けたからには綺麗に走らせたい、というプロ意識の強い言葉を耳にしたので、んじゃ御近所さんっちゃ御近所さんだしゴブジ号で練習しとく? という流れになったのだった。
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