ミシシッピを北上する旅の終わりは、ボブ・ディランの故郷
2024年の8月末から、アメリカをミシシッピ川沿いに南北縦断して音楽の歴史をたどる旅に出ることにした筆者。ブルースの故郷である「ミシシッピ・デルタ」を仲間と4人で巡った後は、ひとり旅。ニューオリンズのハーツレンタカーで借りたキア「スポーテージ」を“キムさん”と名づけて相棒とし、各地を巡って北上してきました。イリノイ州シカゴ近郊のロックフォードに行き、次に目指すのはボブ・ディランの故郷、ミネソタ州です。
すでに北国に入り、紅葉の中をひた走る
当初の予定ではシカゴから西に向かい、ミシシッピ川沿いの町、アイオワ州ダビュークに出てハイウェイ61でミネアポリスに入る予定だった。しかし、ロックフォードに1泊してしまったため、次の目的地ミネソタ州ダルースに向かってまっすぐに北上することにした。ウィスコンシン州を一気に縦断するルートだ。あわよくばミルウォーキーに寄り道をして、おいしいドイツスタイルのビールを楽しみたかったが、それも断念。30日間は長いようだが、意外と余裕はない。
調べてみるとダルースまでは800km以上ある。ローレント邸の見学を終えてロックフォードを出たのが昼過ぎ。とてもその日中には着かない。行けるところまで行って、適当なモーテルに転がり込むことにした。
ニューオリンズからスタートしたドライブ旅行も直線で3000km以上、北上したことになる。周囲の景色が変わるのも当然だ。サービスエリアでクルマから下りると肌寒い。ジャケットを着込んで散歩コースをいくと、紅葉の景色が見えた。すでに北国に入ったのだ。
アクセルを踏み続けるが、地図はなかなか前に進まない。4日後にはミネアポリス空港発のデルタ航空機に乗らなければならない。長い旅行のときはいつもそうだが、帰りのことを考えた途端に寂しい気分になる。すでに車内に音楽はない。風切り音だけを聴きながら森の中のフリーウェイをひた走る。
それにしても“キムさん”はグチもいわずによく走る。本当に感謝である。日が傾いた頃、遠くにモーテル8のサインが見えてきた。さすがに疲れた。名も知らない町だが、ここに泊まることにする。
ディランのファンならぜひ走りたい、ハイウェイ61
翌朝、目的地のミネソタ州ダルースに入った。給油のためガソリンスタンドに入って驚いた。なんとエタノール入りのガソリンを売っている。通常のガスに比べて(1ガロン=約3.8Lあたり)1ドル安い。ちょっと悩んだが、万が一、トラブルがあるとたまったものではない。奮発して(?)「NO ETHANOL ADDED」を選んだ。
ダルースは五大湖のひとつ、スペリオル湖の南西端にある町だ。ここに来た目的はボブ・ディランの生家を訪ねること。そして、この町はハイウェイ61が通っている。ディランには「追憶のハイウェイ61」という名盤がある。フォークソングのヒーローだったディランがエレクトリックに転じて物議を醸した作品だ。その話は映画『名もなき者』(2024年米国公開、日本では2025年2月公開)にも描かれた。彼の大ファンを自称するぼくとしては、ぜひ訪れたい町だった。
ちなみにハイウェイ61はスペリオル湖に沿ってさらに伸びてカナダの国境を越え、サンダーベイという町で消滅する。
















































































