市販モデルにはない6LのV8エンジンを搭載!
じつは今回出品されたCLK DTM AMGは、「P900」のサブネームが添えられるモデル。これはCLK DTM AMGのプロトタイプとしてわずかに4台が生産されたもので、そのうち2台は廃棄されているため、現存するのは2台のみ。1台は現在もAMG USAによって保管されているから、実際にオークション市場に出回る可能性があるのは、この1台のみなのである。
このP900の最大の特徴は、それに搭載されるエンジンにある。CLK DTM AMGは、5.5Lのスーパーチャージャー付きV型8気筒エンジン(M113K型)を搭載し、582psの最高出力と800Nmの最大トルクを発揮するが、このP900には当時開発途中だった6028ccの自然吸気V型8気筒(M156型)が搭載されていたのだ。
正確には最終的に510psの最高出力と630Nmの最大トルクを発揮したこのエンジンの開発のために、P900は製作されたと考えるのが妥当だろう。300 SEL 6.3の伝説的なオマージュとして、6.3Lと表記されたこのエンジンは、2006年にE63でデビューし、その後多くのAMG車に搭載されたのは周知のとおりである。
DTMマシンのスピリットを感じさせる内外装
一見、市販型のCLK DTM AMGと共通であるかのようにも見えるP900のエクステリアとインテリアだが、詳細にそのディテールを見ると、多くの部分でそれに独自のフィニッシュが施されているのが分かる。それは確かに1980年代から1990年代にかけてのDTMマシンのスピリットを感じさせるもの。市販車のCLK500アバンギャルドをベースとしながらも、AMGのVIPカスタマーが求める最高品質を満たすよう製作されているのも特長だ。
このP900が、そのようなプロセスで販売されたのかは不明だが、新たなオーナーは幅広いコレクションを所有し、AMGのレーシングカーのパッケージの一部として、P900を購入したとされる。近年はほとんど走行されておらず、オドメーターには3500kmの数字が刻まれるのみだが、そのコンディションは良好に保たれている。
だが残念ながら、今回のオークションではこのP900には落札者は現れなかった。CLK DTM AMGをベースとして使用したプロトタイプのP900。オークション市場では実質ワンオフの初登場モデルといってもよいだけに、その価値を見定めるのはなかなか困難だったのだろう。






























































