“ドイツタイヤ同窓会”を一手に引き受けたコンチネンタル
まずはその戦略眼に注目すべきでしょう。コンチネンタルは1871年に創業した老舗ですが、単なるタイヤ屋では終わらなかったのが特徴です。1990年代以降はグローバルな部品サプライヤーとしての地位を確立し、電子制御ブレーキやセンサー、ADAS関連技術にも積極投資。もはや「タイヤの会社」と呼ぶにはスケールが違いすぎます。
さらに買収の名手でもあります。フルダはグッドイヤーに買われましたが、ゼンペリットやフェニックスといったブランドはコンチネンタルが吸収しました。現在もコンチの傘下ブランドとして一部市場でひっそりと生き延びております。いわば“ドイツタイヤ同窓会”を一手に引き受けた感じです。
そして忘れてはならないのが、モータースポーツとの関係です。そんな独占メーカーですからレースにも積極的……ではないのです。
かつてコンチネンタルはF1のようなハイプロファイルな舞台には登場していないものの、DTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)やラリークロス、耐久レースなど、地元密着型かつ技術志向の高いカテゴリーで長年活動してきたという歴史があります。とくに過酷な条件下での耐久性と制動性能を武器に、多くのファクトリーチームやプライベーターから信頼を得ています。
「誰よりも早く、タイヤのその先を見ていた」
もっとも、彼らのレース活動はあまり派手ではありません。ショービジネスとしてのモータースポーツというよりも、技術検証と開発の延長線上にある真面目な取り組みが多いのです。ある意味、ドイツらしいと言えましょう。いまではほとんど、サーキットでコンチネンタルの文字を見ることはありません。
さらにOEM市場では、BMW、メルセデス・ベンツ、アウディといったプレミアムブランドの“標準装備タイヤ”として長年の信頼を勝ち取っています。現在のコンチネンタルは、世界タイヤ業界でミシュラン、ブリヂストン、グッドイヤーに続く第4番目の巨頭。ただし、自動運転や電動化の潮流に合わせて、単なるタイヤメーカーを超えた「クルマの未来を支えるテクノロジーカンパニー」として存在感を増しています。
結局のところ、ドイツのタイヤ業界においてコンチネンタルだけが残ったのは、「勝ち残った」というより、「誰よりも早く、タイヤのその先を見ていた」からに他なりません。
そして今もなお、コンチネンタルが製造するタイヤのなかには、フルダやゼンペリットのDNAが静かに息づいています。時にサーキットで、時にアウトバーンで、そのスピリットはしっかりと路面を掴んでいるのです。
質実剛健、コンチネンタルにはそんなイメージがしますね。




































