ジムニーシリーズはこれからが旬!?
レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之氏が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「スズキ ジムニーの納期」です。まだまだ納車に時間がかかる一方で、今買ってもまったく遅くないといいます。その理由とは。
注文後にマイナーチェンジや新型モデルが追加!
スズキ「ジムニー シエラ」を注文したのは2022年の秋。納車されたのは2024年の夏だから、まるまる2年待ったことになる。いくらなんでも長すぎる。だが、それだけ人気が衰えないということ。JB74型のデビューは2018年の7月。発売から4年が経っても、なお熱気は冷めるどころか、むしろ熟成していた。
販売店のセールスマネージャーも、僕の注文書を前にして頭をかきながら言った。
「ご注文ありがとうございます。ただ、納期はですね……」
申し訳なさそうなその態度に、責任を問う気も起きなかった。人気車種の宿命というやつだ。ところが、待っている間にマイナーチェンジが入るという追い打ちが来た。国交省の新基準でリアパークソナーの装着が義務化され、それに対応するために一部仕様変更が入るとのこと。改良前モデルなら納期が早まるとも言われたが、さすがに新車を買うのに旧仕様というのは、気分が乗らない。結局、さらに待つことにした。
そして、ようやく納車されたころに、またしてもニュースが飛び込んでくる。ジムニーシリーズに5ドアモデルが登場。「ノマド」という名を冠したその新型は、発表後わずか5日で5万台の受注。これはもう、お祭り騒ぎどころではない。スズキも予想外だったのか、急遽受注停止に踏み切った。
「これ以上お待たせするのは心苦しい」
といった理由だが、買うことすら許されないというのも、なかなかのプレミア感である。
もちろん、生産を急げという声もある。
ジムニー ノマドの生産は時間がかかる
だが、現実はそう簡単ではない。ノマドの組み立てはインドのグルガオン工場で行われているが、ATやトランスファーは日本製。海を越えてインドへ運び、完成車がまた海を渡ってくるという手間のかかる構造だ。
さらに言えば、船のスペースにも限界がある。スズキは同じくインドで「フロンクス」というSUVも作っているので、どちらかを増やせば、どちらかを減らさなければならない。どちらも人気ときては、にっちもさっちもいかない。
ただ、最近の朗報としては、ノマドに乗り換えようとシエラの注文をキャンセルした人が一定数いたことで、シエラの納期が少し短くなった。なかには、「ノマドが来るまでシエラで繋ぐ」という強者も現れている。愛が深いというより、もはや軽い浮気のようでもある。
それにしても、ジムニーシリーズのモデルライフは長い。普通なら5年ごとにモデルチェンジするのが業界の常識だが、ジムニーは過去の例からして、20年スパンで現役を張る車だ。このままいけば、シエラのフルモデルチェンジは2037年。あと12年は旧型にならない計算だ。
つまり、いま購入してもまったく遅くない。むしろ、これからが“旬”と言っていい。ジムニーが人を惹きつける理由は、待たされただけ、じわじわと染みてくる。少し焦らされたほうが、愛着も深まるものだ。


















































