もの心ついた時には、すでにこの伝説級レーシングスポーツが自宅に…!
ご本人の希望で匿名とさせていただいたが、今回の「グランプレミオ・スコルピオニッシマ」に1300SPを持ち込んだFさんは、今は亡きお父上から6年前にこのクルマを引き継いだ。つまりこの1300SPは、少なくとも日本においては、いわゆる「ワンオーナー車」ならぬ「ワンファミリーオーナー車」ということになる。
Fさんのお父上は、日本におけるアバルト趣味の創成期を支えた人物のひとり。まだ「アバルト」というブランドが日本ではあまり知られていなかった1970-80年代に、珠玉のアバルトたちを輸入し、その素晴らしさを仲間たちに伝道していった。この個体も、現在50歳のFさん曰く
「もの心ついたころには、すでにうちにありました」
そして現在、当時Fさんのお父上が日本に上陸させたアバルトたちの多くは、「クラブ・アバルト・ジアッポーネ」の重鎮メンバーたちに引き継がれた。いっぽう、この1300SPは親譲りのスポーツカー好きとなっていたFさんが引き受けることになった。
そして迎えた「グランプレミオ・スコルピオニッシマ」当日ながら、1300SPは朝からなぜかスターターモーターの調子が優れず、しかも高圧縮比エンジンということで始動性も良くはない。そこで、専属のメカニックさんたちが数名で推し掛けや牽引車を利用して、毎回苦労の末に始動させていたのだが、ひとたび火が入ればやはりアバルト伝説のレーシングスポーツである。弾けるようなサウンドが炸裂し、ショートサーキット全体にアバルト シムカ系の咆哮が木霊するさまは、まさに壮観というほかなかったのである。
ちなみに、Fさんに1300SPとの今後について伺ってみたところ
「もちろん、これからもずっと大切に乗り続けていこうかと思ってますが、まずはスターターを直さないといけないですね(笑)」
というご返答であった。

















































