“カラビニエリ”コスプレの124スパイダーでサーキットを駆け抜ける
マツダとフィアットとの技術提携によりND型「ロードスター」をベースに開発されたフィアット「124スパイダー」(日本未導入)に、さらにチューンを加えたモデルとして2016年にデビューしたアバルト「124スパイダー」。今回はアバルト124スパイダーを、実際には存在しないパトロールカー風に仕立ててエントリーした女性オーナーを紹介します。
本当は実在しない124スパイダーのカラビニエリ仕様をつくってみた
2025年3月20日にサーキット走行会形式のクラブイベント「Gran Premio Scorpionissama(グランプレミオ・スコルピオニッシマ)」。イベント当日の朝、富士スピードウェイのゲートが開いた直後にショートサーキットを訪れると、すでにパドックには複数の新旧アバルトとそのドライバーやメカニックたちが集まり、サーキット走行への準備を始めている。そこで目に飛び込んできたのが、濃紺ボディに「CARABINIERI(カラビニエリ)」の文字が入った、パトカー風のアバルト124スパイダー。いわば「クルマ版コスプレ」を施した1台であった。
調べてみると、カラビニエリとは旧イタリア王国騎兵隊の治安維持部隊から発展したとされる軍警察で、イタリア共和国となった今でも「Polizia di Stato(州警察)」や「Guardia di Finanza(財務警察)」などとともに警察活動を行い、さらに有事とあれば憲兵隊および戦闘部隊として機能するとのこと。
くわえて、旧貴族や上流階級の子弟が箔づけとして奉職した事例も多かったせいか、あるいは制服や車両の上品な仕立てのせいか、イタリアでは比較的エリート職と見なされているようだ。
カラビニエリの隊員たちが身を包む制服は、かつては濃紺(現在は黒に切り替わっているそう)の上下合わせ。パンタローネ(ズボン)の両サイドには、幅1cmほどの赤い側帯がウエストから裾まで入る。
そしてカラビニエリで使用される警察車両も、同じく濃紺に赤いピンストライプが入れられるのだが、この日の「グランプレミオ・スコルピオニッシマ」において、「アバルト・プント」などとともに「Gr.B」枠で走行したアバルト 124スパイダーもまた、黒に近い濃紺にお洒落な赤いストライプで、じつにシックないでたちとなっていたのだ。
もう1台、日常使い用に所有している
この2017年型アバルト 124スパイダーとともに会場に現れたのは、森 正江さんという女性のイタリア車エンスー。かつてはアウトビアンキ A112やフィアット プントHGTを愛用していたものの、もとよりサーキット志向の強い彼女は次のように話す。
「FRのイタリア車でサーキットを走りたくて購入しました」
その傍ら、アバルト 124スパイダーというクルマがすっかり気に入ってしまったのか、1台は日常使い用、もう1台はサーキット用とするべく、白い124スパイダーまで入手してしまったという。
そんな思い切りの良さから、こちらのカラビニエリ風124スパイダーは、OS技研の「スーパーロックデュアルコアLSD」やアラゴスタの車高調節機構つきサスペンションキットなどで、サーキット走行に向けてしっかり武装。そして外装はお洒落な女性ならではのセンスで、みごとにキマった1台となったのである。
この超絶シックなアバルト124スパイダーについて、あるいはご自身のカーライフについて今後の目標を伺ってみたところ……。
「70歳までサーキットを走っていたいです」
なるほど森さんは、最高のパートナーを手に入れたということなのであろう。