軽ワゴンが当時物パーツで徹底武装
18歳で手にしたスズキMC系「ワゴンR」をベースに、街道レーサーをモチーフにした異色のカスタムを貫いている26歳のオーナーがいます。あえて“ツルし”を避け、昭和の物パーツを一点一点探し出して作り上げた珠玉の仕様。そのこだわりのカスタムカーを見ていきます。
カスタムのモチーフは街道レーサー
世界が注目する日本のカスタムは、その内容も仕様も細分化している。スポーツカーにはこれ、ミニバンならこんなスタイル、SUVだったらこんな仕様と、ある程度の決まりごとのなかで好みのスタイルを決めるのがセオリーとされている。広島県在住の廣吉さん(26歳)は、現在の愛車であるスズキ2代目MC系「ワゴンR」を18歳で購入。その頃はドレスアップ全盛で市販のエアロパーツを装着させ、派手な色にオールペンして飾ることが流行っていた。しかし、ただキット物を買って取り付けるだけでは面白くないと考え、独自の仕様を追求する道を選択。いわゆる「ツルし」と呼ばれるキットパーツに頼ることなく、現在の独特のスタイルを完成させた。
「これならいないだろう」と、廣吉さんが“俺仕様”のワゴンRを作るにあたって考えたカスタムは、昔から旧車が好きだったという理由から、1980年代の街道レーサーをモチーフにアレンジすることだった。
とくにマニアックな改造を施すことで、街道レーサーに焦点を合わせて製作した廣吉さんのワゴンRは、昭和のクルマ好きにとっても注目すべきパーツを数多く使っているのが最大の特徴。その仕様について話を聞くと、これまでにないアプローチが唯一無二であることを強く感じる内容だった。
ハコスカ用チンスポをワゴンRに装着
細部を紹介していくと、まずワンオフ製作したフロントバンパーにはハコスカ用のチンスポイラーを短縮加工して装着。また、MC系ワゴンRの優しい表情を厳つい雰囲気に変えるべくボンネットを一部延長加工し、ツリ目になるように工夫している。このボンネットはてっきりどこかのメーカー物かと思ったが、なるべく既製品は使いたくないため、純正のボンネットを加工して装着。これに伴って専用グリルも製作したという。
また、ツリ目となったヘッドライトにはゴールドのライトジャケット風カバーを取り付け、アピール力を高めている。その奥にセットされたヘッドライトは、旧車好きならすぐに気づく“猫マーク”でお馴染みのマーシャルに交換しているのもポイントだ。
ほかにも当時物のコーナーポールマーカーが懐かしさを醸し出し、ウインカーも“ブタケツ”の愛称で知られる日産2代目C130型「ローレル」用を移植するなど、街道レーサーならではの仕上げを徹底的に演出している。ホイールは、その形のわかりやすさから“一円玉ホイール”として一世を風靡したSSRマークIを履かせ、さらにボディサイドにはゴールドのイナズマデカールラインを引くことも街道レーサーの流儀といえる。
水中花にLOVE灯…昭和アイテムを惜しみなく投入
内装はシートカバーなどによって張り替えているが、それ以外は街道レーサー御用達アイテムを中心にカスタムを施している。その種類はとても多く、水中花シフトノブをはじめ、「クルマにポピー」でお馴染みのグレイスメイトポピーの芳香剤、チューリップ灰皿、流星灯、LOVE灯、紫回転灯といった知る人ぞ知るグッズをセット。ウッドステアリングは“オバ”で、クリアホーンボタン内には矢沢永吉さんの若いころ、おそらくキャロル時代の写真が入っていた。
見た目をそれっぽく仕上げるだけでなく、使っているパーツも今となっては手に入りにくい当時物を集めてセットしたという廣吉さんのワゴンR。現在は汎用パーツも数多く出まわっているが、そうした物に頼ることなく自分が思い描く理想を追求し、ブレることなく仕上げにこだわる。趣味の世界で楽しむカスタムは、本来こうして楽しむこと。廣吉さんの愛車製作秘話を聞きながら、あらためて強く感じた。今後の予定は、ドアミラーを当時物のビタローニに交換することだという。
>>>2023年にAMWで紹介されたクルマを1冊にまとめた「AMW car life snap 2023-2024」はこちら(外部サイト)