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ワイパーは“なぜ進化しない”のか?技術と美意識の結論【Key’s note】

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TEXT: 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)  PHOTO: 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)

メルセデス・ベンツの「夢のワイパー」が消えた理由

メルセデス・ベンツは「パノラマワイパー」という先進的な仕組みを導入したこともありました。アームが複雑な動きでガラス全体をなめらかに掃く、という夢のようなアイデアです。しかし、樹脂製のリンク機構が耐久性に乏しく、やがて故障が多発。静かに市場から姿を消しました。

技術的な問題だけでなく、デザイン上の挑戦でもありました。プレリュードに1本アーム式を採用したホンダの思惑も、単なる先進性アピールではなかったようです。

当時の日本ではフェンダーミラーが法的に義務付けられていました。プレリュードの低く構えたボンネットに、ニョキっと突き出すフェンダーミラーがどうにも野暮ったかったのです。ホンダのデザイナーたちは、スタイリングの美学を守るため、苦肉の策としてワンアーム式を選択しました。1本であれば、より広い拭き取り面積が確保でき、ミラーの位置にも自由度が生まれる。技術と美意識のせめぎ合いの中で、生まれた解決策でした。

けれど、どれだけ理由があろうとも、今も主流は2本アーム式です。静かに、でも確かに左右で呼吸を合わせ、雨粒を払う。その姿はまるで、楽団の指揮に合わせて動くパートナーたちのようでもあり、なんとも微笑ましく、そして頼もしいのです。

不変の美しさが、そこにある

クルマが空を飛び、ステアリングが操縦桿に変わろうとも、ワイパーは変わりません。おそらく、これからもずっと。そこにあるのは、技術の限界ではなく、たぶん“ちょうどいい”という完成形なのです。

変わらないということは、時に進化よりも価値があります。

それでも、どこか誇らしげにガラスを拭うあのワイパーは、私たちが忘れかけた「不変の美」をそっと語りかけているのかもしれません。

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  • 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
  • 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
  • 1960年5月5日生まれ。明治学院大学経済学部卒業。体育会自動車部主将。日本学生チャンピオン。出版社編集部勤務後にレーシングドライバー、シャーナリストに転身。日産、トヨタ、三菱のメーカー契約。全日本、欧州のレースでシリーズチャンピオンを獲得。スーパー耐久史上最多勝利数記録を更新中。伝統的なニュルブルクリンク24時間レースには日本人最多出場、最速タイム、最高位を保持。2018年はブランパンGTアジアシリーズに参戦。シリーズチャンピオン獲得。レクサスブランドアドバイザー。現在はトーヨータイヤのアンバサダーに就任。レース活動と並行して、積極的にマスコミへの出演、執筆活動をこなす。テレビ出演の他、自動車雑誌および一般男性誌に多数執筆。数誌に連載レギュラーページを持つ。日本カーオブザイヤー選考委員。日本モータージャーナリスト協会所属。日本ボートオブザイヤー選考委員。
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