クラシック高騰の裏で比較的安価に落札

2003年モデルのフェラーリ「360モデナ」が、ボナムスによるグッドウッド・オークションに登場しました。F355の後継として1999年にデビューした360モデナは、革新的な設計と美しいデザインで多くのファンを魅了してきました。今回はワンオーナーで走行距離わずか7200kmという希少な個体が出品され、注目の落札結果となりました。

1989年登場の348以来となる完全刷新モデル

360モデナは、F355の後継車として1999年に発表されたV型8気筒ミッドシップ・2シーターである。前身であるF355の基本設計は、1989年に登場した348シリーズにさかのぼることができる。つまりフェラーリは約10年を経て、その設計を全面的に刷新する決断を下したのだ。

360モデナが誕生した際、まず人々を驚かせたのはボディデザインの大きな変化であった。ピニンファリーナのダビデ・アルカンジェリを中心とするチームが手がけ、従来のトンネルバック・スタイルを廃し、滑らかに傾斜するリア・エンジンカバーを採用した。さらにエアロダイナミクスは進化し、フロントから導入したエアをアンダボディーに流し、ヴェンチュリートンネルを通してリアディフューザーから抜くことで、グランド・エフェクトカーとしての性能を高めた。そのため大型ウイングを必要とせず、洗練された姿を実現している。

348やF355がセミモノコック構造を採用していたのに対し、360モデナではアルミニウム押し出し材によるスペースフレーム構造を復活させた。加えてボディパネルもアルミ化され、結果として1290kgという軽量性を達成。発表当時、この軽さは大きなアピールポイントであった。

好条件が並ぶ個体だったが意外にもリーズナブル

F355から引き継がれたのはDOHC40バルブのV型8気筒エンジンのみだったが、ストロークを1mm延長し、排気量は3586ccへと拡大。最高出力は400psに達した。組み合わせは3ペダルの6速MTに加え、2ペダルのセミAT「F1マチック」が選択可能であった。この軽量ボディとパワートレーンの組み合わせにより、0→100km/h加速4.5秒、最高速295km/hという性能を誇った。

F430が2004年に登場するまで、360モデナはもっともポピュラーなフェラーリとして市場で評価されたが、その後は存在感がやや薄れた印象もある。今回ボナムズに登場したのは2002年式のF1仕様で、走行距離はわずか4500マイル（7200km）。新車からワンオーナーという点も大きな魅力であった。予想落札価格は5万～7万ポンド（邦貨換算約1010万円～1414万円）とされたが、右ハンドル仕様という事情も影響しただろう。

最終的に入札は5万5200ポンド（邦貨換算約1115万円）で止まった。クラシックフェラーリが高騰を続けるなか、この価格は比較的リーズナブルであり、魅力的な結果といえる。今後、360モデナやオープン仕様の360スパイダーの市場動向がどう推移するか、注目していきたい。