不調だったクルマが時間を重ねてかけがえのない相棒となった
クラシックカーに対する知識がさほどない頃に偶然出会った1台のMG「B」。ところが、最初は頼りなくても当たり前と言われ、不安も抱えながら乗っていました。ところがセカンドオピニオンによって大修理を敢行して時間を共に過ごすうちに、気付けばかけがえのない存在に変わっていました。
ポルシェ964型911でクラシックカーラリー参加して楽しさは知るが……
爽やかな季節に開催されるラリーイベント「コッパディ小海」にMG「B」で参加していた小川喜康さん。コ・ドライバーは大学・自動車部時代からの友人である山田恵一さんだ。標高差のあるコッパディ小海のコースをオープンカーで駆け抜けるのがとても気持ち良いと、毎年楽しみにしているという。このようなラリーに参加するようになったきっかけは、比較的年式が新しいクルマでも参加できるイベントだった。
「当時乗っていたのはポルシェ911(964型)でしたが、1960年代からの継続生産車とみなしてくれたのでしょうね。初エントリーできて嬉しかったのですが、他車との世代の違いを痛感しました」
前年に見学で訪れたイベントの楽しさを味わいながらも、前後に並んでいた旧いクルマへの憧れを募らせていった。
2010年頃からクラシックカーに興味を持ち、展示や走行イベントを観に行っていた小川さん。ラリーへの出場は2015年に叶うことになった。そして翌2016年、ある日、とある都市のクラシックミニ専門ショップで、ほこりを被った整備途中の右ハンドルMG「B」と出会う。
「値段も手頃でしたし、右ハンドルだという点も魅力に感じたので、後のことは深く考えずに購入しました」
購入費用相当の大手術を施して見事に蘇ったパワーユニット
小川さんにとって初めてのクラシックカー。手に入れたクルマの状態がどの程度かわからなかった。購入したショップや、その後足まわりを改善してくれたショップで
「こんなものですよ」
と言われた言葉を信じていた。
「油圧計の針が上がらないのも問題ないと言われても、クラシックカーに詳しくありませんでしたが、少し不安になりましたよね」
そして、セカンドオピニオンとして見てもらったショップでオイルパンの中を点検したところ、鉄粉だらけでオーバーホールは必須状態だった。
エンジンのブロックのボーリング、オーバーサイズピストンへの変更、コンロッドのバランス取り、カムシャフトの修正、ラジエータの張り替えと、あっという間に車両代に匹敵する「諭吉さん(当時)」が飛んでいったそうだ。
その後、慣らし運転を終えると、それまでの不調が嘘のようにMG「B」はパワフルに蘇った(これが本来の姿だったのか!)。
「当初、MG「B」は入門用に良いかなと選んだのですが、この修理をしなければ、おそらく2〜3年でほかのクルマに乗り換えていたと思います。また、年式が1971年ということで、どうしても1960年代の仲間に入れない劣等感のようなものにつきまとわれましたが、気付けば購入から9年を越しました。トラブルだらけのクルマを、よくここまで仕上げて乗ってこられたと感慨深いです」
劣等感を持ったこともあるMk3ボディのMG「B」だが、現存数が少なく、逆に珍しいこともあり、最近はよく褒められるのも嬉しいという小川さん。
クラシックカーラリーに参加し始めて10年。最近は「線踏み」と呼ばれるPC競技でも上位に入ることもあり、さらに楽しくなってきた。
苦楽を共にしたMG-Bは「腐れ縁になるね」と笑顔を見せてくれた。





















































