バブルカーのバブル景気はどうやら鎮静化の傾向にある
1955年4月の発売当初、BMW版イセッタは同社のモーターサイクル「R25」用の4ストローク単気筒OHV・12psエンジンを搭載してスタートしたものの、翌1956年2月には13psを発生する298ccの4ストローク単気筒エンジンを搭載した「イセッタ300」へと移行した。乾燥重量700ポンド(約320kg)の車体は0→97km/h加速に28秒を要したものの、1Lあたり約24.3kmの燃費を達成した。
今回、ボナムズ社の「The Quail 2025」オークションに出品されたBMWイセッタは、1958年7月1日に西ドイツ・バイエルン州ミュンヘンのBMW本社工場からラインオフしたと伝えられる、イセッタ300である。3輪車に優遇税制のある国向けに作られた3輪版ではなく、通常のナロートレッドの4輪版だ。ロールトップ式サンルーフを備えるほか、固定式サイドウインドウと組み合わされた換気用のスライド式ガラスパネルを持つ。
後期モデルの特徴であるスライド式のサイドウインドウと同様に、リアデッキには非常に便利なラゲッジラックも設置されていた。これは、コックピット内の収納スペースが限られているためである。
イセッタ300の現在に至る来歴は不明であるものの、過去にレストアが施された痕跡がある。現在では現役当時の純正オプションであったブルーとアイボリーの2トーン塗装が施されている。
アイコニックなクローム仕上げのミニバンパーと、まるで昆虫の目のようなヘッドライトが特徴だ。ウインドスクリーンの中央に1本のワイパーを備え、そのすぐ下にはBMWのエンブレムが配されるという、イセッタのオリジナルを体現した仕立てとなっている。
ボナムズ社の公式WEBカタログでは
「このスマートな小型イセッタは、BMWのマイクロカー史における特別な逸品として優れた収集価値を持つだけでなく、サンルーフを開けた状態であっても最高速度50mph(約80km/h)で駆け抜け、その後、オートバイ用スペースに駐車するという忘れがたい体験を提供してくれる」
という、ユニークなPRフレーズが謳われていた。2万ドル~3万ドル(邦貨換算約296万円〜444万円)という現在の市場動向をよく分析していると見られるエスティメート(推定落札価格)を設定した。
また、この出品車両については「Offered Without Reserve(リザーブ=最低落札価格なし)」で行うこととした。
「リザーヴなし」という出品スタイルは、入札価格の多寡を問わず確実に落札されることから競売会場の購買意欲が盛り上がり、エスティメートを超える勢いで入札が進むこともある点がメリットである。しかしその反面、たとえ出品者の意にそぐわない安値であっても落札されてしまうという不可避的な落とし穴もある。
こうしてオークション当日を迎えた。ゴルフクラブ内に設けられた巨大な特設テント内のステージで開催された競売では、2万1280ドルで落札された。現在の為替レートで日本円に換算すれば約314万円という、エスティメート範囲内に届いた価格は、バブルカー相場が少なからず鎮静化していることを物語るハンマープライスである。
































































































